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Vongole Company
131師匠の花さん
「あら、貴女が神崎悠南ちゃん?
私は黒川花、よろしくね」
「よ、よろしくお願いします…!」
「何緊張してんだテメェ」
「うるさいな、獄寺さん…!」


玄関先で出迎えた黒川花さんは写真で見たとおり黒髪で落ち着いた綺麗な人だった。

さらに傍らに京子さんとハルさんがいる、この三人が並ぶと絵になるよね、本当に…!

初対面の花さんと緊張しながら握手を交わしていると、私の隣に立っていた獄寺さんが吐き出すように言う。

相変わらずデリカシーがない人だな、獄寺さんよ。


「なんか言いたげだな、アン?」
「いえ何も…!」


獄寺さんの鬱陶しそうな目を避けるように、私は花さんを夕飯の用意された広間へと通した。

広間には私が初めて夕飯を食べた時のような長いテーブルが設置されていて、一番奥の皆が見渡せるような席に綱吉さんが座っている。

そして順々に幹部さん、そしてヴァリアーの皆さんが座っている。

こうして見るとけっこう恐ろしい光景ですな、オイ。


「久しぶりだね、黒川」
「おっ、久しぶりじゃん。ちょっとは男っぽくなったね」
「そう?」


す、すごい…!

私は羨望の眼差しを花さんに向けて送った。

なんていったって綱吉さんと対等に話しているのだ、なんというかそれだけでもう…師匠と呼びたい。

よく見てみれば綱吉さんに一番近い二つの席、ちょうどその二つの席が向かい合う形になっているところが空席になっている。

そのうちの一つに花さんが座り、もう片方は空席のまま。


「…もう一つの席には誰か座るんですか?」


花さんをエスコートするという役目も終えた私は指定された山本さんの隣に座りながら山本さんに話しかける。

ん、と顔を上げた山本さんは「ああ」と納得したように笑うと二カッと教えてくれた。


「あそこは笹川先輩だな」
「あ、そうですよね」


そうだった、花さんとお付き合いをしている了平さんという存在があったのだった。

そういえば了平さん帰ってきてたっけ、準備してる間とかあんまり見なかった気が…


「し、しししし失礼する!!」


バーン、という派手派手しい音がしたかと思うと広間の扉を勢いよく開けて自分でその音にびっくりする了平さんの姿。

なぜか緊張している様子で、いつもなら豪快に笑い飛ばすはずなのに扉に向かって「す、すまん…」とか頭を下げている。

明らかに様子がおかしい。


「シシッ、緊張してやんのー」
「こらベルちゃん、冷やかすんじゃありません」


私の右隣、山本さんとは反対の場所に座るベルさんがその様子を見てニヤニヤと笑う。

それを向かいのルッス姐さんが咎めていた。

なにこの二人、事情知ってるの?

困惑の思いも込めて山本さんを見ると、山本さんも笑顔を浮かべるだけで何も教えてくれない。

一体何が始まるんだろう、不思議なことに花さんも同じように事情が呑み込めていない感じだった。

その後、了平さんは花さんと向かい合わせの空席にたどり着くまでに大変な時間を要し、座っている皆の椅子を何度蹴ったか分からない。

私の席も見事に蹴られ、座っていた私にガクンと衝撃がきた。

了平さんは慌てたように私の頭をポンポンと撫でる、いや撫でるというより叩いてるに近いけど。


「す、すまん、悠南!」
「だ、だだだ大丈夫です!」


なんとか席に座る了平さんはさっきから深すぎる深呼吸をしていて花さんとなかなか目を合わせていない。

久しぶりに会ったはずなのに目を合わせないなんてどうしたんだろう、私が心配するのもおこがましいけど不安になる。

そんな了平さんの態度に首をかしげているのは私と花さんだけ、どういうことだ。

綱吉さんは珍しく黒いオーラを感じさせない笑顔で皆に食事を勧めた。





「山本さん」
「ん?」
「この後なんかあるんですか?」
「ハハッ、なんでだ?」
「いや、なんかその…ソワソワしてるな、と




……………獄寺さんが」


和食メニューの夕飯の味噌汁をすすった後、隣で焼き魚を美味しそうに食べている山本さんに話しかける。

了平さんの緊張ぶりは変わらないし、なぜかそれに比例してるようにソワソワする獄寺さんが謎だ、謎すぎる。

斜め前に座る獄寺さんはさっきから箸を落としたりいろいろと悲惨なことになっている、山本さんも手を止めて獄寺さんをまじまじと見た。


「な、なんだよ…」
「いや悠南から獄寺が落ち着かないって教えてもらってさ」
「てめっ…!」


おい、なんでそこで私に睨みが来るんだ。

そしてベルさん、ナイフで焼き魚切り刻むって悪趣味ですよ。

隣で魚を細かくフレーク状にしてるベルさんの様子をちらりと見ていると、突然上ずった声が聞こえた。

ああ、これは…了平さんだ。


「例のものを頼む!」
「………」


突然スッと目の前の雲雀さんが立ちあがる。

さっきまで私の玉子焼きを我が物顔で奪っていた雲雀さんはそのまま広間から出て行ってしまう。

シンと静かになった広間では、了平さんがまたもや深すぎる深呼吸の音が響く。


「フゥー…スゥー…」
「笹川先輩気合い入ってるのな」
「は?」
「まだ分かってねーのかよ、シシッ」


山本さんが意味深な言葉をつぶやくも、私は訳も分からず疑問の言葉をぶつける。

山本さんの方を向いていた私に後ろからベルさんの容赦ない言葉が突き刺さる、なんだ皆して私を除け者にする気か…!?

いや、もうすでにされてるんだけど。

そんなことをしている間に雲雀さんが再び広間に戻ってきて、了平さんに何かを投げつけた。

私には目で追うのが精いっぱい、おそらく自分に向かって投げつけられたら顔面直撃間違いなし。

そんな物体を了平さんはパシッと顔直前で受け止め、そわそわした様子で中のものを取り出した。


「…あ!」


それは私がすごく見覚えがあるものだった。

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あきゅろす。
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