Vongole Company
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「なーなー、俺菓子食いてー」
沢田綱吉に召集されたため、メンバー全員でVongole Companyに向かうヴァリアー部隊。
クソボスことXANXUSも普段なら「お前がこっちに出向いてこい」と沢田綱吉に突っ掛かるところだが、今回はあっけなく了承。
こうして他のメンバーと共に黒塗りのベンツで揺られている。
1番広い後頭部座席を一人で悠々と占領。
世間一般には『最恐』と呼ばれるヴァリアーも、ボスに逆らえる者は誰もいない。
ということで、おとなしく中央にテーブルが置かれたサイドの席に分かれて座っている。
そんな中、ベルことベルフェゴールが不意にしたお菓子要求。
ベルの言葉をスクアーロはあっさりと吐き捨てた。
「う゛ぉおい、ガキみたいなこと言ってんじゃねぇぞぉお」
「うっせ、鮫」
「なんだとぉお?!」
相変わらずベル先輩は嘲笑を浮かべて、スクアーロ先輩に突っ掛かりますー。
それを律儀に返すスクアーロ先輩、絶対老後は高血圧で入院ですよねー。
あ、オカマが仲裁に入りましたー。
ちなみに僕、フランですー。
「まあまあちょうど商店街みたいだし、寄ってけばいいじゃない」
運転手に伝え、静かな速度で車は動きを止める。
ベルは「よっしゃ!」と笑みを浮かべ、ルッスーリアへと手を差し出す。
「シシッ、金ー」
「マーモンちゃんかレヴィちゃんに貰いなさい」
「僕のお金を?嫌だよ」
「俺も断…」
「お前のはこっちから願い下げだし、シシッ」
車を降りながら喧嘩を繰り広げる面々を見ながら、最後に車から降りようとしたスクアーロは車内を振り返る。
「う゛ぉおい、てめぇは行かねぇのかぁあ?」
残るは長い脚を組んだまま目を閉じるXANXUSただ一人。
どっかりと腰を落ち着けた様子は到底動く気配もなく、案の定沈黙の後に言ったのは否定の言葉だった。
「行かん」
「そうかぁあ」
予想はしていたために、スクアーロは躊躇いなく自分にとってはかなり小さい車のドアをくぐる。
「留守番頼んだぞぉお」
「…ハッ」
軽口を叩いてもブチ切れない。
さらに最近はこのように軽口を笑って流すようになった。
随分丸くなったもんだなぁあ
何が彼をここまで変えたのか思い浮かぶことはあるものの、口には出さず。
とりあえず買い物するか、と車のドアを閉めようとすると後ろからベルの楽しげな声が入り込んできた。
「あ、もしかしてあれ悠南じゃね?」
ベルの声にスクアーロはドアを閉めながら振り返る。
「悠南だとぉ?
どこ…」
バンッ!
「う゛ぉおい?!」
強打された鼻を押さえつつ、痛みで叫び声を上げる。
閉めようと、いや閉めた瞬間に中から「ドアが外れるのではないか」と思うほどの力でドアが開けられたのだ。
そしてその威力は衰えることなくスクアーロの顔面にヒットした。
一方のXANXUSは涼しい顔で車から降り立つ。
「何すんだぁあ!!!」
ドアを開けた張本人であるXANXUSに抗議するも、XANXUSはやはり聞こえていない様子で辺りを見回している。
そしてベルに「どこだ」と詰め寄り、ベルは素直に方角を指差す。
「ほら、あっち」
(誰だ、その一緒に喫茶店にいる男は…)
ベルの指差す方を少し目を細めて見ると、そのまま無言でズンズンと進んでいく。
残されたヴァリアーの面々は唖然として背中を見送る。
特にレヴィはXANXUSの行動が理解できない様子で、後を付いて行こうとした。
「ボス?!
俺も一緒に…」
「シシッ、今邪魔したらマジで殺されるからやめとけって」
「むっ?!」
ベルは数少ない優しさを見せ、力付くでレヴィを止めルッスーリアも一緒に続いた。
「やっぱりクソボスを変えたのはお前だぜぇ、悠南」
徐々に小さくなる大きな背中を見送りながら、スクアーロは口元に笑みを浮かべそう呟いた。
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