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Vongole Company
126頭のカタイ人
上を慎重に見上げた私は、後ろで襟首を掴む顔を捉えてピシリと硬直してしまった。

この黒髪で。

目つきが鋭くて。

左頬に古傷残るこの方は。


「ザ、XANXUSさん…!」
「こんなとこで油売って何やってんだ」


XANXUSさんはぐいっと私をテーブル席のソファから立たせ、周りの白蘭さんや正チャンさんをジロリと見渡す。

なんでこんなところにXANXUSさんが…?!

白蘭さんは飄々とした笑顔のままだけれど、正チャンさんはなぜか顔面蒼白。

スパナさんは日本語りを止め、またビー玉のような目でXANXUSを見つめている。

XANXUSさんは、ことさら白蘭さんを見た挙げ句に

「ミルフィオーレか」

と吐き捨てた。

XANXUSさんの言葉を頭の中で復唱するも、聞き慣れない単語で頭はこんがらがった。

ミ、ミルフィ…?


「ミルフィーユ?」
「かっ消すぞ」
「ジョークです、ほんのひと時の私の気分明るくなる冗談です!!」


とりあえず1番近そうな単語を挙げてみるものの、冗談のまったく通じないXANXUSさんは容赦なく私を目だけで殺しかける。

明日腰を痛めそうな勢いで頭を下げていると、近くから掠れたような声が聞こえてきた。


「ヴァリアーのXANXUS…?」


呟いた人物は正チャンさん。

眼鏡に縁取られた目の奥底は信じられないと言わんばかりに見開かれていて。



XANXUSさんって有名人…?

いや、もしかしたら市民の人たちから理不尽な税を徴収してる悪名高いマフィアとして恐れられて…?!

XANXUSさんに対して非常に失礼な勝手なことを思っていると、白蘭さんが最後の砦アイスクリームを一口で食べた後に薄く目を開いた。

今までずっとニコニコと目を細めたままだったから、目を開けたところを見たのは初めて。

目を開けちらりとXANXUSさんに視線を向けた後、再び目を細めて私たちに顔を向けたまま喋り始める。


「こんなところで会うなんて奇遇だね、XANXUSクン」


XANXUSさんをクン付け…?!

思わず白蘭さんを凝視するものの、XANXUSさんは聞くつもりはまったく無いようで私の襟首をズルズルと引きずり始める。


「行くぞ」
「え、あ、ちょ?!」


別れの挨拶もまともに出来ないまま、XANXUSさんは喫茶店の中を突っ切った。

その間の店内の無言ときたら全て私に恥をかかせたようなもので。

カランカランとドアに付いたベルが陽気に鳴ったのを最後に私とXANXUSさんは店内から嵐のように立ち去った。

…にしても。


「ぐえっ、首絞まる…!」
「ちゃんと歩け」


突如現れたXANXUSさんの馬鹿力は相当なもんです…!



先程まで目の前で自分たちと共にお茶していた人物がさらわれた。

…いや、もしかしたら迎えがきた、と言った方が正しいのかもしれない。


「悠南ちゃん、XANXUSと知り合いだったのか…?」


そんな馬鹿な、と正一が頭を抱えていると白蘭は紙袋に入っていたマシュマロが詰まった袋をテーブルの上に一つ置いた。

スパナも正一の横で飴を軽くくわえたまま、空中を見ながら呟く。


「ウチのジャッポーネについての知識、聞いてくれそうだったのに」


ついでにミニモスカ見せるつもりだった、と作業着のポケットから手の平サイズのミニモスカを取り出した。

ガサガサと音を立てながら白蘭はマシュマロを一つ手に取り、ふにふにと弾力を確かめるように押した後に口へほうり込む。

そしてすっかり混乱気味の正一の顔を見てニコリと言い放った。


「正チャン、正チャン。
悠南ちゃんの秘密、教えてあげようか?」
「秘密…?」


怪訝そうな顔をして見る正一に「ウン」と頷きながら、再びマシュマロを口へ運ぶ。

そしてうっすらと目を開き、口元から笑みを消してこっそりと呟いた。

様々な感情を混ぜ込めた光を目の底に光らせながら。


「悠南ちゃん、ボンゴレのキーパーソンなんだよね♪」



「はくしょーい!!」
「うっせぇ」
「風邪引いたんですよ、多分」
「馬鹿は風邪引かねえ」
「私に対して失礼ですよ、XANXUSさん!」

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あきゅろす。
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