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Vongole Company
125謎の三人衆
「へえ、悠南ちゃんって言うんだ」
「まあ、はい…」



何してるんだろう、私…!

クロームさんと見事にはぐれた私は「白蘭さん」という人に連れられて、とある喫茶店のテーブル席に座っている。

隣にはイチゴパフェを美味しそうにつつく白蘭さん、そして目の前には男性二人。

眼鏡をかけた人が「正チャンさん」で、作業着で飴をくわえた人が「スパナさん」と言うらしい。



「白蘭サンが迷惑かけてごめんね、悠南ちゃん」
「いえ、大丈夫です!
振り回されるのには慣れております!」
「慣れて…?」



もちろんふざけた幹部の人達に、とは付け加えずに言い切ると正チャンさんは不思議そうな顔をしたまま。

正チャンさんはこのメンバーの中で最も常識がある、というより世間一般的に見てもすごく「普通」の人。

対して白蘭さんとスパナさんは何か違うような気がする。

あまり考えたくもないけど、どことなくあの世間知らずな幹部さんたちに似ているような…!

正チャンさんは「慣れてるってどういうことだ」と聞きたげだったけれど、白蘭サンが隣で苺を頬張りながら私に話し掛けてきたために話はうやむやになった。


「悠南ちゃんはここら辺に住んでるの?」


う、と思わず返答に詰まる。

まさか少し離れた場所からリーゼント頭の運転手、そして送迎車付きで来ています、なんて言うわけにはいかない。

どこぞのお嬢さんだ、って話になるだろうし、第一あそこの幹部たちを家族と思われたくないような…!

とりあえず当たり障りなく


「いや、ここら辺では…」


と答え、その場を凌いだ。

そんな答えでも白蘭さんは表情を微かにも変えず

「そっかあ」

とニコニコの逆に怖いくらいの笑みを口元に浮かべている。



これはやっぱり…

綱吉さん属性!!

いろんな意味でのブラックスマイルとか、さりげなく人を小馬鹿にしてるところとか…!

白蘭さんって二代目綱吉さんじゃないか!

こういう人とはなるべく早く離れなくちゃいけない、無駄に関わると面倒なことになる。

とは分かっているものの。

よく考えればいつまでこの人たちに付き合ってるつもりだ、私!

まだ喫茶店には入ってきて10分くらいだけれど、このままではいつまで居させられるか分からない。

なんとか突破口を見つけようと不審なくらいにキョロキョロと辺りを見渡していると、スッと目の前に何かを差し出された。

光に柔らかに反射して、少し甘ったるい匂いのするコレは…


「飴?」
「あげる」


飴の差出人は、金髪でクルクルくせ毛のスパナさん。

飴を見つめていると、スパナさんが私の鼻先に突き付けるかのごとく飴を近付けてくるので有り難く受け取る。

棒付きの普通の飴だけど…なんだか変な形。

思わず心の感想をポロリと口に出してしまった。


「面白い形ですね」
「ウチが作った」


しげしげと見つめていると、スパナさんがしれっと答えた。

嘘、これスパナさんが作ってるの?!

…あ、もしかしたら。


「スパナさんだからスパナ型の飴ですか?」


なんとなく閃いたことを口にすると、スパナさんの猫のような目がさらに大きく広がってビー玉のようになる。

男の人には失礼かもしれないけど可愛い、ものすごく。

スパナさんは口に飴をくわえたまま、「うん」と頷いた。

嗚呼、なんというダジャレ。

イタリアの人でもダジャレって言うんだね、日本のおじさんが言うことはテレビで見て知ってるけど…!


「ダジャレですね」


クスリと笑うと、スパナさんの目がまたクワッと見開かれた。

さっきのとは違う、なにかにスイッチが入ったかのような…

そう、まるで変態ナッポーの変態スイッチが入ったときのような!


「ダジャレ!
日本の文化だね、ウチ好きだよ」


今までおっとりしていたスパナさんが急に饒舌に語りはじめ、私は少々身を引く。

何か私は地雷を踏んでしまったらしい、多分「日本文化ワード」だろうけど。

白蘭さんは隣でニコニコと

「スパナくんは日本好きだもんねー」

とパフェの1番下、フレーク部分をつついているし、正チャンさんも

「スパナは日本が好きなんだ」

とスパナさんの隣でやや呆れた顔で座っている。


え、このスパナさんの話に私は付き合わされ…?!


恐らく一時間は超えるであろう独壇場を覚悟したときだった。


「何してやがる、悠南」


ぐいっと襟首を掴まれる感覚、そして頭上から少し久しぶりな声。

聞いたことある声だよ、これは…!

私はそっとこの状況から救ってくれた人物がいるであろう、上を見上げた。

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