Vongole Company
124ブラックスマイル再臨
私の発言に、初めて雲雀さんは驚いた表情を見せた。
「悠南たちお昼食べてないの?」
「えぇ、まあ」
貴方の手元にあった京子さんとハルさん手作りのサンドウィッチが私たちのお昼だったんですけどね、と言えたらどんなにいいだろう。
しかしそんなこと言っても謝罪の言葉が雲雀さんの口から出てくるとは到底思えないために言わないでおいた。
クロームさんと外食なんて初めてだし、ポジティブにいこう…!!
グッと拳を握りしめ、私はクロームさんと共に食堂を出た。
お財布は綱吉さんの机の中に入ってるカードを使えばいいことになっている。
「悠南、僕も外食行くよ」
「結構です、サンドウィッチ食べたでしょ」
「悠南、クローム、僕も行きますよ!」
「…うるさい、骸様」
「クロームっ?!」
ハンカチOK、ティッシュOK、ついでに綱吉さん名義のカードも『レオン財布』という謎の財布に入れてある。
この『レオン財布』とやらがまた不思議な一品で長財布にも、必要に応じてはレジ袋になる類い稀なるもの。
前に一回だけリボーンさんが拳銃として右手に持っていた物はレオン財布ではないと信じたい、いや信じさせて下さい…!!
レオン財布の前で「紐があったら首に掛けられるのに…」と呟いたらいきなり発光して紐部分が現れた謎はスルーすることにした。
そのレオン財布を首から掛け、いざ降り立ちました商店街。
送り迎えは雲雀さんの側近、草壁さんと言う人がやってくれるらしい。
「では用が済みましたら指を鳴らしてください、お迎えに上がります」
「指を鳴らす…?」
「はい、こうしてパチンと鳴らしていただければ結構ですので」
「はあ…」
それでは、と御丁寧に車の扉を閉め頭を下げて草壁さんは車で商店街を後にしていった。
草壁さん、髪型は特徴的だけどとてもいい人みたいです…!!
ポツンとクロームさんと二人並ぶ商店街。
Vongole寮から車で約20分。
一般的な市民の人々が溢れている商店街を見て、私はホッとする。
平和って最高だよ…!!
軒を連ねる店の数々に圧倒されつつ、夕飯の買い出しは後回しにしてとりあえず昼食を摂ることにした。
所々に構えるカフェを覗きつつ、クロームさんと共に商店街を歩き回る。
ちょうどクリスマスの時期だからだろうか、親子連れがたくさんいる商店街は気をつけなければすぐに人にぶつかってしまう。
とあるお菓子屋さんの前でクロームさんと立ち止まり、「ケーキも美味しそうですね」と話していたときだった。
「マシマロー♪」
「うわっ?!」
突如後ろからドン、という衝撃と何かが乾燥したコンクリートに落ちた音がした。
少し前につんのめった形の私は、腰を屈めてショーウインドーを覗いていたためにガラスに額を見事にぶつけた。
後ろからの衝撃と前からのガラスの鈍い衝撃。
けっこう痛い挟み撃ち。
「大丈夫?」と聞いてくるクロームさんに笑顔で答えながら額をさすっていると、後ろからぶつかってきたのであろう人から声が掛かった。
「ゴメンね、痛かったよね?」
大丈夫ですよ、と振り返ると紫がかった髪にニッコリと笑顔のまだ若そうな男性が。
どうして私の周りには顔がイイ人がいっぱい現れるんだろう、と思いつつも彼を見上げる。
「いえ、大丈夫で…あっ?!」
「ン?」
下のコンクリートを見ればバラバラと散らばるマシュマロがたくさん詰まった袋。
こんなに何に使うのかよくわかんないけど拾わなきゃ…!!
慌てて散らばった袋をかき集め、紫がかった髪の人に手渡す。
「ありがとね、僕の方が悪かったのに」
笑いながらマシュマロの詰まった袋を受け取り、左腕に抱えていた紙袋にガサガサと詰め込んでいる。
まだまだ中にはたくさん入ってるらしい。
「じゃあ、あの…失礼しました」
もう一度ペコッと謝り、私はその場を後にしようとする。
クロームさん行きましょう、と振り返るとそこには…
「クロームさん何処へェエ?!」
忽然と人影が無くなっておりました。
おかしいな、さっきまで隣でケーキ眺めてたのに、え?
先程までクロームさんがいた場所を見つめつつブツブツと呟いていると、とっくにいなくなっていたと思い込んでいた紫がかった髪の人が声を掛けてきた。
「連れの女の子もいなくなっちゃったみたいだし、一緒にお昼食べない?」
「え?!」
いきなりのお誘いに全力で首を横に振る。
怪しい人に付いてっちゃダメだ、って雲雀さんや変態ナッポーに何度言われたことか…!!
この商店街にくる前に耳が痛くなるほど聞かされた言葉。
『怪しい人に付いていってはいけません』
決して紫がかった髪の人が怪しいなんて言わないけれど、やはり初対面の人に付いてっちゃマズイ、非常に。
しかし私の拒否を意に介することもなく私の腕を右腕で掴み、ニッコリと笑う紫がかった男性。
この笑顔怖いわ、これは綱吉さんとはまた違うブラックスマイル…!!
「ほらほら、行こー♪」
そのまま左手にマシュマロ袋いっぱいの紙袋、右手に私の左腕を掴んだままズンズンと歩いていく紫がかった男性。
悲しいかな、男性の力に私は対抗できん…!!
すると人込みの向こうからこちらに向かって走ってくる人影が見えた。
あれ、走ってるのは一人だけど人影は二つ…?
ハアハアと息せき切って走る人と、その人に作業着の襟首を掴まれて引きずられるように連れてこられている人が近付いてくる。
紫がかった髪の人も目の前からやってくる人に気付いたのか足を止め、ニッコリと近付いてくるのを待っている。
必然的に腕を掴まれてる私も立ち止まることになるわけで、走ってくる二人の到着を待つ。
やがて二人は人込みを乗り越え、私たちの目と鼻の先の距離にきた。
作業着の人を掴んで走ってきた眼鏡の人は息を切らしながら紫がかった髪の人を見据えて口を開く。
「一人で勝手に…行動しないでって、はあはあ…言ってるでしょ、白蘭サン…!
はあ、疲れた…」
「このお店のマシマロ美味しくってつい♪」
悪戯に笑う紫がかった髪の人(白蘭さん、という人らしい)を恨めしげな顔で見た後、眼鏡の人の視線が私に移った。
そのまま口を開いた眼鏡の人の言葉に私は納得するしかなかった。
「…で、誰ですか?
その傍らの子は?」
「…ですよね」
見ず知らずの女がいたらそりゃ変だわな…!!
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