Vongole Company
123サンドウィッチ抗争
私の頭に顎を乗っけた状態らしい雲雀さん。
今回ばかりは雲雀さんの顔を直視することがなくて良かったと思う、だって今雲雀さんの顔を見たら【エンゲージリング】のことしか頭に思い浮かばないだろうし。
いや、直視してなくてもエンゲージリングのことしか頭に無いけどさ…!
いつも私が抵抗しているのに今日は抵抗しないのを不審に思ったのか、雲雀さんは頭から顎を離し私の肩を掴んだ。
そのままクルリと向きを変えられ、あら残念。
向き合う形になってるゥウ!!!
直視なんて出来たもんじゃない、とキョロキョロ視線を泳がせている私を雲雀さんは飽きもせずにジーッと凝視している。
エンゲージリング勝手に見てすみません、本当にすみません、どうか命だけはァア!!
と勝手な命乞いを心の中でしていると雲雀さんは私の肩に手を置いたままゆっくり口を開いた。
「ねぇ、悠南。
僕に隠してることあるんじゃないの?」
「そそそ、そんなことあるわけないじゃな…「嘘つくなら咬み殺すよ」ヒィイイイ!!」
ジリジリと雲雀さんの顔が、目が、唇が私の眼前に広がってくる。
蛇に睨まれた蛙状態の私を救い出したのは『自称:紳士』の彼だった。
「恭弥、僕の悠南に何をするんです?!」
台詞は置いとこう、置いとこうか。
とにもかくにも変態ナッポーは私の腕を掴み、雲雀さんの手中から助け出してくれた。
ありがとうございます、とお礼を言うと変態ナッポーは気を良くしたのか、雲雀さんの顔を指差し爆弾発言を投下しようとする。
「そして部屋にあったエンゲー…クハッ?!」
「ちょい待てぃ!!」
エンゲージリング、と言い切ろうとした変態ナッポーの口を慌てて手で塞ぐ。
身長差があるために背伸びをしないと変態ナッポーの口に手が届かないけどしょうがない、エンゲージリング発言されるよりマシ…!!
モゴモゴとなおも口を動かす変態ナッポーをなんとか押さえつけながら雲雀さんを見ると明らかに疑わしげな目で私たちを見ている。
そんな雲雀さんをあはは、と交わしながら問い掛ける。
「雲雀さん随分と早かったですね?
帰るのは夕方って聞いてましたけど…」
「今日笹川たちいないんでしょ?
しかもうるさい草食動物たちもいない。
そこの変態と悠南の二人だけにさせたら危ないと思ってね」
はて、雲雀さんの発言の真意がよく分からない。
「変態ナッポーと二人じゃないですよ?
ほら、クロームさんもいますし」
ようやく黙った変態ナッポーから手を離し、影に隠れるようにしていたクロームさんを手で示す。
ビクリと肩を震わせたクロームさん。
雲雀さんのこと怖いんだろうか、いや普通怖いよね…!!
この目力に慣れた私ドンマイ、と自分を勇気付けていると雲雀さんは「そういう問題じゃなくて」とクロームさんを一瞥し、ため息をついた。
しかしすぐに目を上げ、私をキッと見る雲雀さん。
日本の「歌舞伎役者」みたいな目力ですこと…!!
「さっきそこの変態が言いかけてたこと、気になるんだけど。
エンゲー…?」
「雲雀さん、お昼は食べました?!」
再びエンゲージリング話題じゃないかァア!!!
と私は内心叫び、あわてて話題を方向転換。
訝しげに眉間にシワを寄せながら「まだ食べてないけど」と雲雀さんは答える。
なんとかしてエンゲージリングから話題を逸らさなくちゃいけない、絶対!
エンゲージリングを見つけたことがバレたら最期、墓場の手配を済ませておかなかったことを後悔しそうになりそうだから。
つまりアレです、死が待ち受けているのではないかと、うん。
空気を読んでいるんだか、ただ単純なのか分からないけれど変態ナッポーが昼食の話題に食いついた。
「残念ですが恭弥、君の昼食はありませんよ。
僕と悠南とクロームの昼食は用意されてるんですが…」
君のはありません、と勝ち誇ったように先程クロームさんから手渡されたサンドウィッチの皿を高々と突き上げる変態ナッポー。
あれ、そのサンドウィッチのお皿でさっきまで泣きそうになってたの誰だっけ…?!
それより「君のお昼はないんだよ」なんて小学生の喧嘩か!
しかし雲雀さんは変態ナッポーの発言に少なからずカチンときたようで、机の上に置かれていたもう一つのお皿を手に持った。
「ここにサンドウィッチ余ってるよ」
フン、と軽く鼻を鳴らし変態ナッポーの目の前でサンドウィッチを取り出し口に入れ込む雲雀さん。
いや、あの、それクロームさんと私のお昼…
なんてとても言い出せず、パクパクと何も言わずに口に運ぶ雲雀さんを見つめる。
それに対抗した変態ナッポーもラップを剥ぎ取りモグモグと真剣な表情でサンドウィッチを頬張る始末。
サンドウィッチってそんな早食いするもんじゃねェエ!!!
と雲雀さんと骸さんを交互に見るも、両者お互いに一歩も譲らず。
あっという間にお皿にはパン粉が申し訳程度に残っているだけになってしまった。
私たちのお昼返せ、なんて言えず謎の沈黙が続く中、私はクロームさんに声を掛けた。
「今日の夕飯の食料の買い出しも兼ねて…
お昼、外食しましょうか」
「…うん」
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