Vongole Company
122子離れ
「恭弥の部屋にエンゲージリングが?」
「…はい」
変態丸出し発言は置いといて、
【雲雀さんの部屋にエンゲージリングらしき物が】
という本題を切り出すとさすがの変態ナッポーも予想外だったのか、軽く目を見開く。
どうにもこうにも心当たりはないらしく
「恭弥に女性の存在…意外ですね」
などとまともなことを口走り、顎に手を添えている。
素はカッコイイんだから変態発言しなければいいのに…もったいない!
ジーッとまともな発言をする変態ナッポーを見ている私に何を思ったのか、変態ナッポーは顔を赤く染め上げた。
この変態は今度は何を考えたんだか…!
「変態ナッポー、何を赤くなって…」
「そんなに見つめないでください、悠南!」
さすがの僕も照れます、と顎にあった手を顔を挟むような位置に持っていく。
子供がやれば可愛いのに…!!
大人(しかも男)がやっても可愛さのカケラもなく気持ち悪いだけの仕草。
いや、もしかしたらこんな変態ナッポーのことを好きな人にとっては鼻血ものかもしれない。
残念なことに私は気持ち悪さしか感じることは出来ないけれど。
ほら、隣の見るからに「骸様大好き!」なクロームさんも気持ち悪さで顔を引き攣らせてるし。
いまだに手を頬に当てて赤くなっている変態ナッポーから目を外し、時計をチラリと見る。
時計の針が差すのは短針、長針どちらも12。
もうお昼か、と思いつつ変態ナッポーをそのままに食堂へ行くことにした。
「クロームさん、食堂行きましょう」
「…うん」
「僕も行きます、今日こそ悠南にお口あーんを…」
「しません」
食堂に着くといくつか並べられた長机の一番手前の机上に大きめなお皿とメモ用紙。
私とクロームさんと変態ナッポーは三人でその机に近付き、メモを手に取った。
「サンドウィッチ三人で仲良く食べてね、だそうです」
書いてあることを読み上げると、変態ナッポーとクロームさんはそれぞれに頷き、クロームさんはキッチンへと消えていった。
あれ、クロームさん何処へ…?!
私がクロームさんの消えた方を見ていると、底が浅めのお皿を手に持ったクロームさんが現れた。
そしてそのまま、サンドウィッチが入ったお皿の隣にコトリと置く。
ペリペリッ―
クロームさんは無言で皿に被されていたラップを取り、丸めて横に置いた。
クロームさん何を…?!
私も変態ナッポーもクロームさんの真意が分からぬまま見守っていると、お皿からサンドウィッチを一つ取り出し、持ってきたお皿に移しかえていく。
その作業を何回か繰り返した後、クロームさんは再びキッチンへ消えた。
その間に隣同士の私と変態ナッポーは小声でコソコソと会話を交わす。
「悠南、僕のクロームは何をしてるんです?!」
「私だって分かりませんよ、それと『僕の』とかわざわざ強調しないでください」
「おや、嫉妬ですか?」
「違います、変態ナッポーが気持ち悪いだけです」
相変わらずの会話を繰り広げていると、今度はラップを片手にクロームさんが現れる。
「あの、クロームさん何を…?」
さすがに声を掛けると
「もうちょっとで終わるから…ごめん」
と呟かれ、返す言葉が無くなる。
クロームさんの行動が謎すぎるっ…!
クロームさんは机の前に立ち、ペリペリッと音を立てながら移しかえたばかりのお皿にラップを張る。
変態ナッポーと共に頭にクエスチョンマークを付けまくっていると、ラップを張ったばかりのお皿を両手に持ったクロームさんが振り返った。
するとそのままスーッと変態ナッポーの前に控えめに立った。
「どうしたんですか、クローム?」
変態ナッポーが少し困ったように問い掛けると、目の前にお皿がスッと差し出された。
え、と私と変態ナッポーがお皿を見ているとクロームさんが小さく口を開いた。
「骸様の分…」
クロームさんの言葉に変態ナッポーは一瞬動きを止めるも、すぐにまた動き始めた。
「嗚呼、僕の分を取り分けてくれたんですね?
なんて優しいんでしょう、クローム!
それなら悠南の分も…」
「…違う」
「…クローム?」
少しでもポジティブに考えた変態ナッポーの発言をバッサリと切り捨てたクロームさん。
変態ナッポーは今度は完璧に動きを止め、固い笑顔をクロームさんに向けた。
「じゃあどういう…?」
「…私と悠南ちゃんは二人で食べるから…
骸様は一人で食べて」
骸様は一人で食べて、ということは。
もしかしてもしかすると、もしかしたら。
「…ぶっ、あはは!!!」
「笑わないでください、悠南!」
泣きそうになりながらの変態ナッポーに咎められても私の笑いは収まらない。
一人で食べてって…クロームさんにウザがられたよ、変態ナッポー…!!
これは傑作、とお腹を抱えて笑っていると突如後ろに何かがのしかかった。
「ずいぶん楽しそうだね、悠南?」
その声にピタッと笑いが止まる。
嗚呼この声は渦中の人物…!!
「随分と早いですね、雲雀さん…!」
「…そう?」
私の首に腕を巻き付け、頭上にコツンと顎を乗っける雲雀さん。
おかしいな、帰ってくるの夕方って聞いてたのに…!!
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