Vongole Company
121イタリア語の意味
「こ、これは…」
埃一つない部屋の中、キラリと光る銀色の物。
それは…
「ゆ、ゆゆ指輪?!」
小さくダイヤモンドの光る指輪。
雲雀さんや幹部の人たちが指輪をしているのを知っているけれど、こんな小さなダイヤモンドが付いている指輪は誰も着けていなかった気がする。
そっと手に取ると明らかに男性用のサイズの指輪ではない。
細くて小さな、女性サイズの指輪。
もしや、もしかしてこれは…
「彼女さんにあげる指輪…?!」
嘘、雲雀さんに彼女さんいるの?!
いやあの顔なら彼女がいなくてもおかしいわけじゃない、むしろいない方がおかしい。
どうしよう、とんでもない秘密を知ってしまった気がする…!!
指輪を指先で摘み、床にへたり込んだままでいると立っていたクロームさんからそっと何かを差し出される。
え、と顔を上げると思わず目を見開いてしまった。
「あの…これ、指輪入れる箱じゃない…?」
「…ですね」
クロームさんの言葉に目を見開いたままコクンと頷く。
待て待て、あまりのことに頭がついていってないよ、私。
クロームさんから箱を受け取り、震える手で指輪を入れると見事にフィットして逆さまにしても指輪が落ちてこない。
パコンと蓋を閉めると、金色のきらびやかな細字のイタリア語で何か書いてある。
『Ad adorato Lei』
これは間違いない、と一つのことを確信する。
見なかったことにしようか、それとも…
「あわわわわ」と謎の言葉を呟く私の横にクロームさんが静かに座る。
そして私の手元を見て、ポッと顔を赤らめた。
「誰かに…渡すの…かな?」
「多分そうですよね」
クロームさんの言葉に頷き、震える手で箱ごとベッド脇の小さな棚の上に置いた。
カタン、という音が響き私とクロームさんは無言になる。
なんだか掃除しちゃいけない気がしてきた…!
彼女以外の女が部屋に入ってはいけない気がするっ
「クロームさん、掃除終わりにしましょうか」
「…うん」
掃除機やら叩きやらを引っつかみ、クロームさんと私は急いで部屋を後にした。
なんてものを見てしまったんだ、私は…!!
一階の広間に大急ぎで戻りながら、頭の中にはシルバーリングと箱の文字で頭がいっぱいだった。
悠南たちが立ち去った後、雲雀の寝室にて。
キラリと光るシルバーリングは箱にしっかり納められていた。
正方形の箱の表面に薄く刻まれた金色の文字。
『Ad adorato Lei』
―愛する君へ
クロームさんと共に広間へ急ぎつつ交わした約束。
【これは雲雀さんには内緒にしておこう】
ということ。
さしもの雲雀さんもきっとエンゲージリングの存在が知られたら恥ずかしいだろう、ということで黙っておくことにした。
お互い興奮冷めやらぬままクロームさんと共に広間の扉を開けると、変態ナッポーがハンディモップ片手に机の上の埃を取っているところだった。
帰ってきた私たちに気付き、不気味な笑いを浮かべながらウットリと話し出す。
「悠南、クローム、早かったですね?
あ、もしかして僕に会いたくなって掃除やめてきたんですか…?!」
「それはねーよ」
あらぬ方に考える変態ナッポーの思考を強制終了させ、私はため息をつく。
いつかはこんな変態ナッポーにも婚約相手、なんて出来るんだろうか。
あ、せっかくだから聞いてみよう。
「変態ナッ…いや、骸さん」
「なんですか、悠南?」
ハンディモップ片手に私に近寄ってくる変態ナッポー。
お願いだからハンディモップを顔の前に突き出さないでほしい、埃がね、埃が。
「骸さんは渡す予定のエンゲージリングを彼女さん以外の女の子に見られたくないですよね?」
クロームさんが「聞いていいの?」という眼差しで見てくるけど、多分大丈夫だろう。
だって変態ナッポーだもの。
私の質問を聞くと変態ナッポーは顔を下に向け、肩がフルフルと震え出した。
え、どうしたの、この人…?!
少しばかり心配になり見ていると、突然奇声を上げた。
「クハハァアア!!!」
「は?!」
思わずつられて謎の奇声を出すと、変態ナッポーはニヤリと怪しげに笑い私に自信たっぷりに告げた。
「安心してください、悠南。
僕は悠南以外にエンゲージリングをあげるなんてことはありません、なんせ僕と悠南は一心同体!」
「いやだいぶ論点がズレてるんですけど」
変態ナッポーからまともな答えを期待した私が浅はかだった…!!
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