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Vongole Company
118日本製精密機器
スルスルと上がっていくエレベーター。

やがて最上階に着き、あの独特な浮遊感の後に扉が開いた。

日差しがいっぱいに降り注ぐ廊下。

突き当たりは透明なガラス張りになっていて、イタリアのとある大都市を見渡せるようになっている。

高所恐怖症の私にとっては半殺しの刑以外の何物でもありませんがね…!!

シンと静まり返った廊下に私とクロームさんは踏み出す。

エレベーターは音もなく扉が閉まり、また下へと降りていった。



「さて…

どこから掃除しましょう?」

「…」



私の言葉にクロームさんは首をわずかに傾げる。

こういうときに可愛い子は得だなぁ、と私は思う。

私が同じ行動をしたら

「可愛くないくせに変なことすんな、さっさと決めろ」

くらい腹黒ボスに言われそうですから…!

しばらく悩んだ後に口を開く。

やっぱり単純にやっていきましょう…!!



「うーん、じゃあそうですねぇ…

端からやっていきましょうか!」

「…うん」



私とクロームさんは1番端の「K001」もとい、了平さんの部屋の前に立つ。

そしてドアノブに手をかけ、ゆっくりと回した。

「し、失礼しまーす…」

クロームさんと二人でドアの影から顔を出すも、もちろん返答はないわけで。

「お掃除」

という正当な理由がありながらも、私とクロームさんはなるべく音をたてずに了平さんの部屋へ侵入した。



玄関での滞在をそこそこに、私とクロームさんは思い切ってリビングらしきところに向かう。

リビングといってもベッドやら、キッチンやら、無駄に広い一部屋で収まっているからなんと言えばいいか分からないけれど。

思わず、リビングに入ったときに目についたものがたくさんある。



「…了平さんらしさが全面に溢れ出てますね」

「…うん」



壁に無数に貼られたポスター。

世界チャンピオンなのだろうか、チャンピオンベルトを腰に巻き軽い構えをとっている筋骨隆々の男性。

そして隣にはどこから手に入れたのだろうか「極限!!」と伸び伸び書かれた掛け軸。

私はどんなに巨匠の渾身の一作と言われるものを見せられても落書きとの違いが分からないような美的センスしか持ち合わせてないけれども…!!

ハッと我に返り、辺りを見渡すとクロームさんが掃除機を使うためのコンセントを探していた。

私としたことが…すぐにクロームさんをお手伝いせねば!

クロームさん大好きっ子の私は慌ててクロームさんに近寄る。

しかし途中で思わぬ障害物に邪魔をされた。

「いてっ!!」

小走りの私を邪魔したのはテレビ台。

見事にテレビ台の死角を突いた罠にはまり、私は思い切り足の小指をぶつけた。

地味に痛い、地味に…!!

思わず跪ずき声にならない悲鳴を上げていると、突然目の前が明るい光に包まれる。

続いてパシャッという音が部屋に響く。

え、と何が起きたか把握できずに痛みも忘れポカンとしているとクロームさんがいそいそと近付いてきた。

そしてそっと手を差し出してくれる。



「あ、ありがとうございま…ってその首にかかっている精密機器は何ですかァア?!」



私は感謝しながら差し出された手を取るも、いつの間にかクロームさんの首にかかっていた物に唖然とする。

クロームさんはポッと顔を赤らめ、うつむき加減に口を開いた。



「あの…デジカメ…」

「デジカメェエ?!」

「…うん」



首にかけていたデジカメをさりげなくエプロンのポケットに忍び込ませるクロームさん。

「あぁ、さっきまでそこに入れてたんですか」なんて感心してる場合ではなく!



「さっき…写真撮りました?」

「…うん、骸様が…」



そこまで言い、クロームさんはハッと手で口を塞ぐ。

しかしそこまで聞いて黙ってはいられない。

何しろ私のプライバシーに関わってくる問題だからね…!!

口をつぐんだクロームさんに私は懇願し、なんとかデジカメ所持の真意を確かめられた。



「骸様が

【悠南のショット…そうですね、笑顔から泣き顔、さらには痛みに悶え苦しむ顔まで撮ってくるのです、クローム!

大丈夫です、多少ブレていてもそこは僕の悠南への愛の力で鮮明に表情を復元しますからね!

クロームには報酬として現像後にほんの少し悠南を可愛く加工した写真を差し上げます】

って…」



いろいろと突っ込みどころが満載でどこから突っ込むべきか分からない。

クロームさんを使ってまで盗撮しているところか。

はたまた要求する最後のショット「悶え苦しむ顔」について突っ込むべきか。

または【ほんの少し加工した写真】の「ほんの少し」がどの程度の加工なのか。

考えれば考えるほど変態ナッポーの変態ぶりが際立ってきたため、とりあえず私は一言叫んでおいた。



「あんの変態ナッポーがァア!!!」

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あきゅろす。
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