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Vongole Company
116エスカレート変質者
…バタン

ボンゴレ寮入口の目の前で綱吉さんは車を停め、ドアを開いた。

それにならって私もドアを開け、そろりと外に降り立つ。

するとあっという間に変態ナッポーが私の目の前にやってくるなり喚いた。



「悠南!

悠南!!」

「………」



変態ナッポーから思わず顔を背ける私。

いや、あのなんていうんですか、純粋に込み上げる嫌悪感?

ちょっと生理的に無理かな、ってね…!!

必死に私に向かって手を振る変態ナッポーをひたすらに無視し続けた。



コツン、コツン

高そうな革靴が響く音が聞こえたかと思えば、綱吉さんがすでに歩き出していて。



え、この変態ナッポーと私が二人きりの展開?!

いや、それはやだ…!!



あわてて綱吉さんの後を追う私。

しかし数歩も歩き出さないうちに左腕を後ろから取られた。

不意な出来事に私は「ん?」と顔をしかめ、ゆっくり振り返る。

そこにいたのは避けまくって、避けまくった…のに。



「悠南♪」

「骸…さん」



満面の笑みを浮かべた骸さんが私の左腕をギュッと掴んでいた。

なんだ、またこの人変態発言か変態行為するのか…?!

私は思わず振り返っていた目線を前に戻す、も。



「嘘ー?!」



嗚呼、頼みの綱の綱吉さんよ、あなたは何処へ…!!

先程まで少し前にいたはずの綱吉さんはもうとっくに玄関に入ったのだろうか、何処にも姿が見えなかった。

仕方がないため、また後ろを振り返る。



「…あのー」

「お帰りなさい」



眉間に皺をよせ、どうしたものかと顔をしかめると骸さんは微笑んでいた。

「…はい?」

骸さんの発した言葉にキョトンとすると、骸さんは更に同じ言葉を繰り返す。



「お帰りなさい、悠南。

心配したんですよ?」



貴女が無事で良かった、と骸さんはらしくもなく私の頭をポンポンと叩く。

「ゔ」と私は言葉をつまらせ顔を下に向け、一人葛藤を始める。



え、ちょっと何、ちょ、これ、変態ナッポー?!

キャラ違うんだけれど!!

え、何、もしかして私がいない間に何かがあったの、ちょっと、ねぇ?!



思わず顔を上に向ければ、先程と同じ微笑みを顔に浮かべた骸さん。

いつもの…いや、私が知っている変態ナッポーではない。

いつの間にやら変態ナッポーは紳士骸へと大進化を遂げた様子。

少し違和感はするけれども。

これでまともに変態…否、骸さんと話せるようになるかもしれない。

私は骸さんの微笑みを見つつ返事をした。



「ただいまです、骸さん。

ご迷惑をおかけしました!」



ペこりと頭を下げ、再び骸さんに向き直る。

すると骸さんは綺麗な微笑みを浮かべたまま、私の頬を触った。



「いいんですよ、悠南。

貴女が無事なら、それで…」



少 し ば か り

頬の手が気になる、しかし!

彼は改心したのだ、下手な行動はしまい、と勝手に判断し手をそのままにした。

確実に前までの変態ナッポーだったら

「おい、どこさわってんですか、このやろー」

といった具合で殴っていただろうけれど。

頬にペたりと手をつけたまま、骸さんはぽつりと静かに呟いた。



「…クフフ、やっぱり最高ですね」

「…?」



何か聞こえたような、聞こえないような。

骸さんは下を向き、ちょうど私の目線からは表情が見えなくなっている。

首を傾げている間に、私の頬に触れている指がぴくりと動いた。

そしてそのまま撫でるような動作に変わっていく。



ザーッ



例えるならこんな感じだろうか、私の全身という全身に寒気が走った。

それと共に皮膚がビクリと硬直したような状態。

人はそれを「鳥肌」と呼びます。



「あ…の、骸さん…?」



何かを感じた私は骸さんから慌てて飛び退く。

しかし骸さんは大して気にしない様子でクフフと笑い続けている。

私の頬に触れていた指はまだ微妙に動いていた。

そしていきなり骸さんはクワッと前を向き、叫んだ。



「やはり僕には君です!」

「は?!」



ランランとした目の輝き。

異常なまでの鼻息の荒さ。

嗚呼、これは…

「変態ナッポー」

皆さん、先程の「紳士骸」という言葉を撤回させていただきます。

やっぱりこの目の前のパイナップル男は「変態ナッポー」以外の何者でもないみたいです…!!



「やっぱり僕には貴女だけ…

そうです、悠南、貴女のみ!

嗚呼、やっぱりこのフィット感といい全体的な柔らかさといい…

僕と悠南の身体は一心同体☆」



逃げる間も与えずに変態ナッポーが私を抱きしめる。

長々と台詞を吐き、最終的に「…悠南!!」と呟きさらに私を抱き寄せる。

あの、すみません。

この人、むしろ前より変態っぷり上がってません?

私は抵抗することにも疲れを覚え、されるがままになっていた。



そりゃ身体に危機が迫ったら守りますよ?!

でもなんでしょう、遂に人生に疲れてしまったのかな、私…!!



変態ナッポーに抱き寄せられ数分後。

私は無表情に変態ナッポーの腕の中にいた。

無抵抗な私を見て味をしめたのだろうか、変態ナッポーの手がさりげなく私の胸を触る。

思わずぴくりと反応をすれば、変態ナッポーは次に私の胸を少し掴み…



「死んでこい」



さすがに…ね!!

私は変態ナッポーを下からアッパーする。

しかし変態ナッポーは派手に倒れた後も「クフフ、柔らかい…」などと呟いていた。

ヤバいです、この人本当の変質者に…!!



「…紳士とか思った私が馬鹿でした」

私は変態ナッポーをそのままに玄関へ入った。



いや、本当に…!!

紳士とか思った私の純粋な時間を返してください…!!

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