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Vongole Company
115耳障り
綱吉さんの細長い指がタッチパネルの上をなぞる。

すると車内に流れはじめたBGM。

なぜかピアノの癒されるような曲だったけれど、綱吉さんは上機嫌で運転を続ける。

その一方で私は激しい後悔の念に駆られながら、窓に頭を力無くもたせかけていた。



嗚呼、私の馬鹿…!!

なんで綱吉さんを許してしまったんだ…!!



ゴツンゴツン、と車の振動に合わせて窓に頭突きをする私。

故意にやっているわけではないけれど、そんなことはどうでもいい私は頭を窓に打ち続けていた。



そんなことより学校だよ、学校…!!



ガンガンと頭を打ちながら、何度目であろうかという思案を繰り返す。

どうにか毎日学校行ける方法ないかな…

どうにか、どうにか…!!



「おい」

「は?」



いきなり綱吉さんに声を掛けられ、私は綱吉さんを見る。

すると運転中にも関わらず、綱吉さんは私を見てブラックスマイル全開で言った。



このブラックスマイルは危ない、そしてわき見運転はいけない…!!



「さっきからガンガンうるさいんだけど?

そんなに頭突きすると、ただでさえ動きの悪い脳がもっと使えなくなるよ?」

「…そんなの私の勝手じゃないですか」



勝った、私勝ったよ…!!

初めて綱吉さんと舌戦で勝った、と確信したときだった。

綱吉さんは既に私から視線を外し、前を見据えている。

ニッコリと微笑んだまま、綱吉さんは続けた。



え、何その余裕の笑み…?!



「いや、悠南の脳が使えなくなろうが俺は構わないんだけどさ、

俺の耳障りな音を作ってる人はちょっと痛い目にあってもらおうかなぁ、と思って」

「アハハ、ソウデスヨネー」



綱吉さんの言葉を聞き、私は固い笑顔で返す。

もちろんガンガンという綱吉さんにとって「耳障りな音」を奏でていた頭は窓から反射的に離した。



軽やかなピアノの旋律をどことなく聞きながら変わりゆく風景を見つめて、どれくらい時間が経っただろうか。

ぼんやりと見ていた風景にどことなく見覚えがある気がしてきた。

あれ、私、ここに来たことあるのかな…?



「旅行で来たことあったっけ?」

「お前馬鹿?」



むぅ、と必死に悩みながら呟いた言葉に即座に馬鹿にしたような言葉が続いた。



なんて失礼な…!



「だって分からないですから、方向音痴ですから、残念な脳ですから!!」

「いや、そこで威張るなよ」



私の必死な悪あがきの言葉の数々に綱吉さんは私に冷ややかな視線を浴びせた。

そしてため息をつき、右手のみハンドルから離し、前を人差し指で差す。



「じゃあ、あの建物は何かな、悠南ちゃん?」



幼児に説明するかのように言う綱吉さん。

内心でムッとしながらも私は綱吉さんの指先が差す向きを辿る。



「あ、ボンゴレ寮!

…と?」



車がどんどんと近づいて行くのはボンゴレ寮。

高層ビルだけれどなぜだかホッとする外観。

その建物の前に長身の人影が見える。

私は眉を潜めた。



そう、まるで頭に変なフサが生えたような髪型…

………え?



フ サ ?



残念なことに頭にフサが生えている人物など私の中では一人しかいない。

私の額に冷や汗がスッと流れた。

綱吉さんも舌打ちして呟く。



「よりによって骸か…」

「やっぱりィィ!!」



だんだんと人影がハッキリと見えてくる。

そして動作や表情までも浮き彫りに私や綱吉さんからは見えるようになった。



「…キモ」



綱吉さんが呟く。

うん、そりゃね、満面の笑顔で手を振ってるならまだ分かる…!!

けどそのハチマキはなんだろう、

「I love 悠南」

と書いてあるようにしか見えない私は末期なのでしょうか、神様…!!

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あきゅろす。
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