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Vongole Company
114つわもの
さすがの綱吉さんも二人きりとなると喋らない。

車内に流れるのは気まずい空気。

窓の外の景色が見る度に変わっていく。

太陽は明るく景色を照らしている。

私は綱吉さんの方は一切見ずに窓にのみ視線を集中させていた。

BGMも何もかかっていないため、タイヤが路面を走る音がわずかに聞こえる。



こういうときに性能のいい車は困るよね、雑音を作ってくれなくて…!!



ヴァリアーから出発して30分は経ったのではないかというところ。

車内の静けさは意外な言葉で破られた。



「…悪かった、悠南」

「は?」



え、何、今謝罪の言葉が…?!

思わぬ言葉に私が失礼な返事をすると綱吉さんは軽くため息をつく。

そして何も言わずに路肩に車を停めた。



「…ふぅ」

「…ふ、ふぅ?」


深く深呼吸をした綱吉さん。

思わず私も一緒に深呼吸をする。

すると綱吉さんはフロントガラスに向けていた視線を私に向けた。

まっすぐな瞳。

真剣な表情。



苦手なんだよなぁ…

綱吉さんのこの目…!!



見透かすような目は私の弱点でもある。

しかし吸い付かれたかのように目線を外すことはできなかった。



「本当にごめん!」



車内に声が響いた。

いつもの黒いオーラは消え、ただただ私に頭を下げる綱吉さん。



え、ちょっと何これ、夢…?!



本来の綱吉さんがするはずもない行動。

え、だって俺様大好き綱吉さんが…?!

私をペットだなんだ言う綱吉さんが…?!



私 に 頭 を 下 げ て い る ? !



綱吉さんの怒りに満ちていた私の心は綱吉さんの行動により一瞬で変わる。

嗚呼、あんなに怒っていたのに、私…



「あ、頭上げてください!

全然怒ってませんから!!」



と言う始末。

だって怖いんだもの、

頭下げられてるだけでこちらの寿命が縮んでる気が…!!

私の言葉に綱吉さんは頭を上げ、ホッとため息をつく。

頭を下げている綱吉さんを見ているのは辛い。



…けれど。



「一つだけ取り消してくださいね?」

「…分かってるよ」



学校について。

中退だけは避けさせていただかないと…!!

私が念を押すように言えば、綱吉さんは軽く頷く。



「学校だろ?」



そうです、と私は大きく頷いた。

やっぱり分かってるよ、綱吉さん…!!

学校中退を阻止することに成功したよ、やったね…!

私が胸を撫で下ろした時だった。



「修学旅行とかの行事には行かせてやるから安心しろよ」

「…え?」



綱吉さんの言葉に綱吉さんを見たまま固まる私。

一方の綱吉さんはスッキリした、と言わんばかりにハンドルを握り車道へと繰り出す。



「…今、なんと?」

「二回言わなきゃ分からないの、悠南は?」

「スミマセンデシタ」



確認しようと聞き直せばブラックスマイルで言いくるめられる。

コノヤロウ、許した途端にブラックスマイル復活しやがった…!!

私がギリギリと歯を噛み締めれば綱吉さんは横で鼻歌を上機嫌で歌っている始末。



―修学旅行とかの行事には行かせてやるから安心しろよ



行事 に は ?

には、て言う言葉が妙に引っ掛かる。

じゃあアレですか、授業とかは相変わらず行けないってヤツですか…!!



「じょ、譲歩してもその程度しか学校行けないのでございますかァァ??!」

「学校行けるだけ有り難く思えよ」



私が絶叫に近い声を出せば綱吉さんはハンドルを軽く握りながらブラックスマイルで答える。



嗚呼、こんなことなら…

ずっと綱吉さんに頭下げててもらえばよかった…!!



後悔が私の心を埋めつくしています、神様!

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