Vongole Company
106
「ビアンキたちが悠南、迎えに行ってくれたのな」
いまだに食堂で言い争う幹部たちに車庫から帰ってきた山本は言う。
その言葉に幹部たちは言い争いをやめ、いささか不機嫌そうな顔を見せた。
悠南を迎えに行こうとひっそりと車庫に向かっていた山本を背後から呼び止めたのは他でもない、ビアンキたちだった。
「…ちょっと」
「ん?
ああ、ビアンキたちじゃねぇか!」
山本が振り向けばビアンキを筆頭とする女性陣五人。
こんな揃ってどこ行くんだ…?
山本は首を傾げる。
そんな山本の心情を知ってか知らずか、ハルは声をかけた。
「山本さん、どこ行くんですか?」
「ああ、悠南をヴァリアーまで迎えに行くんだ」
「あら、それなら私たちが行くわ」
ビアンキがすかさず口を挟む。
山本がますます首を傾げ、「いや…俺が行くからいいぜ?」と言う。
しかしビアンキは鼻で笑った。
「馬鹿ね、山本武。
女が説得しに行った方が説得しやすいじゃない」
「ん、そーなのな!」
ビアンキの言葉に素直に納得する山本。
そして車のキーをビアンキに差し出した。
「悠南のこと、頼むのな」
「分かったわ」
山本からキーを受け取り、ビアンキは「行くわよ」と他の女性陣を引き連れて歩き出す。
その後ろ姿を見送っていた山本はある事に気づき「ん?」と眉を潜めた。
そして車に向かう女性陣に向かって叫ぶ。
「なぁ、悠南説得するだけなのにそんなに荷物要るのか?」
山本の言葉にハッと表情が固まる女性陣。
しかし京子だけは柔らかな笑顔で山本に振り向き
「ルッスーリアさんにはちみつパック、いっぱい持ってこうと思って!」
と笑った。
山本が「そーなのな」と納得し、ボンゴレ寮に入ったのを確認してから、女性陣たちは各々の荷物を抱え、再び車に向かった。
トゥルルル―
電話の機械音が広間に鳴り響く。
女性陣が悠南の説得に向かい、とうに半日は経っていた頃。
東にあった太陽も今やすっかり天井を昇り、西へ傾き始めた午後。
数人の幹部たちは今か今か、と仕事もせずに女性陣と悠南の帰宅を待ち望んでいたときだった。
ガチャリ
電話のコール音に少し舌打ちをしながら隼人は受話器を取り上げる。
「もしも「ゔぉおい!!!!」」
隼人の言葉を遮り聞こえてきた怒鳴り声。
キーン…
鼓膜が破れるのではないか、というほどの大声。
耳鳴りもする。
思わず受話器を耳から最大限遠くの位置にし、隼人は叫んだ。
「てめっ、スクアーロかっ?!」
「だったらなんだぁ!!!!」
筒抜けの会話。
広間にいたリボーン、山本、骸はそれぞれ顔をしかめたり苦笑したりした。
隼人は逆にスクアーロに怒鳴り付ける。
「おい、ヴァリアー、てめぇらな、さっさと悠南返しやがれ!!」
そこでピタリと受話器の向こうが静かになる。
そして次のスクアーロの言葉が衝撃の真実をボンゴレに運んだ。
「ゔぉおい…
こっちは悠南だけじゃなく、他の女もこっちに住むとか言って困ったから電話したんだぞぉ!!!!」
「………は?」
スクアーロの言葉にパッと受話器の方に顔を向ける幹部たち。
全員が唖然、呆然とした感じで珍しくリボーンも目を見開いた。
隼人の呟きが静かな広間に響く。
衝 撃
ボンゴレ幹部にはそれ以外の言葉は思い浮かばなかった。
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