Vongole Company
098カエルさん
「あら、おはよう、悠南ちゃん♪」
「おはようございます…」
広間に着けばピンクのエプロンを纏ったルッス姐さんが朝食の皿を運んでいた。
いまだに眠い私はイマイチテンションが上がらない。
隣を歩くマーモンに「ホラホラ」と背中を押され、席に着いた。
私が何気なく見たテーブルの上。
そこには様々な料理がこれでもか、というほど並んでいた。
「これは誰が…?」
私が小さく呟くと隣に座ったマーモンが答えてくれる。
「全部ルッスーリアの手作りだよ」
「へ?」
私は驚愕の目でルッス姐さんを見る。
ルッス姐さんは再びピンクの部屋に行き、ルンルンと楽しそうにフライパンで何か炒めている。
美味しそうないい匂い。
私は「いただきます」と手を合わせ、料理に口をつけた。
ルッス姐さんの料理…
「美味しい!」
「あらーん、ありがとう♪」
私が目を見開き言うと、またしても料理を運んでいたルッス姐さんが笑った。
京子さんたちが作る料理も美味しいけれども…!
ルッス姐さんのも美味しい…!
いいなぁ、料理出来る子っていいなぁ、と思いつつ食べていると広間の扉が開く。
しかし扉の向こうに立っていた人物を見るなり、隣のマーモンは手を止めフンと鼻を鳴らした。
私も一瞬目を疑った。
扉の向こうにいた人物は必死に頭の被り物が扉に引っ掛からないように頑張っている。
「カ、カエルのコスプレですか…?」
私の呟きが被り物の人に届いたらしい。
なんとか扉を抜けた被り物の人は私の言葉を聞き、ムッとした表情で私を見た。
「馬鹿言わないでください、ミーだってこんなもの被りたくないんですよー」
「だったら取ればいいじゃない」
被り物の人(カエルさんと呼ぼう)の言葉にすかさず冷淡に返すマーモン。
もしかしたらマーモンが昨夜言っていた幻術ペテン師というのは、このカエルさんなのかもしれない。
カエルさんはマーモンの言葉を特に気にした様子もなく、スッと席に座る。
なぜか私の目の前。
そして勝手にナイフとフォークを持ち食べはじめた。
なんて自由人だ…!
と思いつつ、私が再び食べ始めようとすると。
カエルさんは「あ、そういえばー」と何気ない口調で口を開いた。
「あなた誰ですかー?
カス鮫隊長の彼女さんだったりしますー?」
「…は?」
いや、気づくの遅いですし。
それより何よりも
なぜ全員私がスクアーロさんの彼女だと疑う?!
私はとりあえず話をかわすことにした。
「私の名前は悠南です、昨日からお世話になっています」
「あ、そうなんですかー」
急な話題転換にも普通についてくるカエルさん。
もしかしたらゴーイングマイウェイタイプだろうか、いや完璧そうだね
私はカエルさんに切り返す。
「じゃあ、あなたの名前は…?」
「あ、ミーですかー?」
カエルさんは自分を指差す。
その動作一つ一つが気に入らないのだろうか、マーモンは隣で無駄にガチャガチャと音を立てている。
マーモンがこんなことするなんて意外…!!
「ミーの名前はフランですー、よろしくお願いします、悠南センパイ」
ペこりと頭を下げるフランさん。
カエルの被り物がテーブルにぶつかり、私は苦笑した。
しかし、さきほどの言葉に少しの違和感を覚える。
「フランさん」
「はい?」
「私、センパイとかじゃないんだけれども」
むしろ後輩とかね、下っ端とかね、そこらへんの埃くらいの価値だよ、私…!!
フランさんは「あー…」としばらく悩み始める。
そして閃いたように手をポンと叩いた。
「悠南センパイの方が年齢は上そうだから大丈夫ですー」
……喧嘩売ってるのか、コノヤロウ…!!
どうせおばさんさ…!
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