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Vongole Company
001突然の家出
ここはイタリア。

とある都市の住宅街。

私は自分の屋敷の2階でベッドに俯せで横たわっていた。



嗚呼、なんかもう…

いろいろ面倒くさい



私は軽くため息をついた。



こんな場所、早く出て行きたい―

そう、あの人の元へ―



俯せになったままでいると、下から両親の声が聞こえてくる。

あの人たちは私がいないと私の悪口ばかり。

いつからだったんだろう、両親たちが…

私に過度の期待をかけ始めたのは。



「ねぇ、あなた。

あの娘、また成績落としたのよ」

「あれ以上成績を下げる?

恥を知らないのか、あいつは」

「あの娘に頑張ってもらわなきゃ…

私たちの面子が立たないわ」



やっぱり…最終的には自分たちのプライドの問題で。

そんな両親が私は大嫌いだった。



「この前なんて、一般の子と遊びたいなんて言ったのよ」

「馬鹿馬鹿しい。

一般のやつらなど、私たちの前にひざまずかせておけばいいものだ」



そう、私の両親はマフィア。

ここら辺では名が知れてるのかな―

私はそんなことに興味はないけれど。

マフィアなんて馬鹿みたいじゃない。

一般市民を配下において、なぜ満足できるの?

人殺しをして、なぜ笑っていられるの?



「そういえばあなた…

返り血がひどいわね。

どうしたの?」

「嗚呼、私の商談に従わないマフィアがいてな…

消してきた」

「あら、そう…」



なぜクスクス笑っているの?

その人は人殺ししたんでしょ?



やっぱりこの家を…

出なきゃ



私はキュッとシーツを握りしめた。

そしてただ漠然と広い部屋を見渡す。



私が人の心を失う前に―

私はここを出なければ。



そして私はベッドから起き上がり、小さな金色のカードを手に取った。



いくら入ってるんだろう…これ



未だ使ったことのない自分のカード。

まあそれなりに入ってはいるだろう。



もう私は縛られない―

自由な猫になるんだから。



普段着として強要されていたワンピース姿で部屋を出る。

廊下の途中ですれ違った召使の人に



「悠南様?!」



と声をかけられたけれど、私は知らない。



「ごめんね、サヨナラ…」



私は何回も呟きつつ、螺旋階段を降りた。

豪快な音を立てて玄関を出る。


「悠南?!」



父親の声が聞こえたが私は振り返らない。



こんな屋敷―

早く出なきゃ私が死ぬ―



一心不乱に門を目指しても道のりは長くて。



嗚呼、なんでこんなに大きな屋敷と庭なんだと恨みつつ走った。



パンパンパン―



乾いた銃声が私の横を掠める。

多分父親が撃ったのだろう。



娘が家出により行方不明

というレッテルより

不慮の事故により娘が死亡

の方が世間体がいいのだろう。



馬鹿馬鹿しい…



最後まで父親に嫌悪感を抱きつつ、屋敷を後にした。

目指す先は、ただひとつ。



「痛っ…」



靴も履かずに玄関を飛び出したため、足の裏には容赦なく小石が刺さる。

30分ほど走ったり休んだり…

ようやく見慣れた建物が見えてくる。

なんだかホッとさせるような―

そんな外観。

看板には

「Vongole」

という文字。



「お、おじいちゃ…」



安堵感からか、私は崩れ落ちるように転んだ。

そしてゆっくりと意識を手放す。



「大丈夫か?!」



黒髪の男の人…?



建物から走ってくる人影をはっきり確認する間もなく、私は意識を完全に手放した。

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あきゅろす。
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