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オリ短編
ラストラブソング 〜最後まで君に愛を捧ぐ〜

窓越しに聞こえる歌。

少し前までは、自分も歌っていただろう場所から。

その場所の目の前の建物のベットで寝ている自分。

隣には少女―秋桜(コスモス)というか、彼女(?)が寝ている。

「......」

くしゃっと、秋桜の頭をなでる。

「...ん? 繁縷(はこべ)...?」

「ごめ...おこした?」

秋桜は微笑んで首を横に振る。

「......この歌...繁縷の歌に似てる...」

確かに、昔自分が作曲した歌に少し似ていた。

最近、歌は歌ってない。自分で時々作詞したりもしているけど

自分の命が短いからかもしれない。

でも―

「俺の最後の歌、秋桜に聞かせてやる」

「さ、最後...? なに言って、病気治して、またいっぱい歌ってくれるでしょ...?」

静かに繁縷は首を振る。

秋桜の表情が凍り、悲しげになる。

やめろ。俺はお前のそんな顔、見たくない。
どうせなら、笑え―

「何で...」

「癌だよ。末期癌。もう、3ヶ月もたねーって」

「や...ヤダ、やだよ、繁縷...」

秋桜が涙目になる。

「だから―お前にこの歌を捧ぐ―」

この歌が歌えれば、声が出なくなろうが、血を吐こうがどうなってもいい。
もちろん死んだって。

♪僕の命は短いかもしれない

長い時間はもうないかもしれない

それでも、短い時間でもいい

キミといる時間が欲しい

死は怖くない

それよりキミとはなれるのが怖く、辛い

キミと祈る時間が少しでも延びることを祈ってる

その時間がどんなに辛く、苦しくても

僕が一番望むこと

この命尽きる時まで

僕はキミに愛を捧ぐ

泣かずに笑って?

キミの笑顔が大好きだから

キミには笑顔が一番だから

僕はキミに数え切れないほどの愛を捧ぐから―

意味なんて聞かないで

僕に向かって笑って―? ♪

ぷつりと歌声がきれ、繁縷が咳き込む。

「繁縷...だいじょうぶっ!?」

秋桜が背中をさする。

「繁縷...ありがとう。私、笑ってるから。泣かず
に...笑うから...」

秋桜の声が、涙混じりになる。

「泣かないんじゃなかった...のかよ、泣き虫」

少し笑って、繁縷が言う。

お願いだから、お前はずっと―
           幸せそうに笑っててくれ―                    俺の分まで


この2ヵ月後の冷え込んだ明け方、繁縷は長く戦った癌のせいで亡くなりました。

秋桜に、苦しむところを見せたくないので明け方だったのでしょう。

きっと弱いところなんて誰にも見られたくなかったんですよ。

彼は。


〜FIN〜


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あきゅろす。
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