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アレルヤ(ハレルヤ)で20のお題
09/まばたきするのさえ勿体無い/五月むつき
全てを、何かを失う事に激しい拒絶を感じていた。心の奥底に穴が空いて、そこから少しずつ中身が抜け堕ちてゆく。双瞼を閉じて浮かぶ遺影は、骸となった生々しい血ばかりのスライドで、見る度に滴と共に嘔咽が漏れた。誰かにすがってでしか生きてゆけない自分に苦辛を抱き、嫌悪を抱く毎日を繰り返す
時折、無口なティエリアの部屋を訪ねては無意味に時間を過ごすだけだった。彼は有無を言わない。彼の思考を考え知ることは、今の僕には不可能。いや、今でなくても未来永刧。静かなる時を過ごすことが出来て、誰も僕を苦しめることはなかった

気が付けば今日も彼の部屋にいた。「迷惑じゃないかい」と問う、しかし彼は背中を向けたまま有無を言わなかった。たまに、様子を伺うように鋭利に眼孔を僕に向けるだけ。静かに時間が過ぎる。いつしか彼の部屋の温か味に溶けて眠りに堕ちていた











どのくらいの時間が経ったのだろうか、彼の部屋は無空間と錯覚しそうな時の流れをしているような気がする。ただ、明確だったのが僕と共に寄り添うように眠るティエリアの存在。ああ、瞬きするのさえ勿体無いくらいに美しい。実際、遠くから眺めているだけで、彼の眼孔に僕の姿が写るだけで、吸い込まれてしまいそうだった


「ティエ、リア」


もしこの世界に神がいたとするなら、僕とティエリアは巡り逢わなかっただろう。僕は人に創られた人間であるのだから。それでも、この世界に神がいるのだと信じてみれば悪いことばかりではないかもしれない
彼の白い肌は美しい。静かに唇を重ねてみる。これで僕は禁断の果実を噛じってしまったのだ。戒め続けなければならない、甘美な彼を目にしてまた僕は彼にすがって生きてゆくしか道が無くなった

ああ、なんて僕は愚かなんだ、ハレルヤ


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あきゅろす。
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