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アレルヤ(ハレルヤ)で20のお題
08/届かない距離/氷月


初めて会った、これから戦友になるであろう人物たちは、皆一癖も二癖もあるような奴ばかりだった。
ガンダムマイスターが初対面を終えて数日。
なんとなくだが、それぞれの性格が掴めてきた。
まず刹那。
一言で言えば、エクシア大好き少年だ。
何か話しかけても無表情無反応。
ただ、エクシアには異常なほどの熱意を向けているらしい。
ああもう、近頃の若い奴のことはよく分からない。
次にティエリア。
アイツは、なんだあれだ。超ド級Sの眼鏡様だ。
近付くことすら中々に難しい。
それに言葉の端々に棘を潜めるのは、是非やめていただきたいものだ。
話すたびに、毛の二三本はストレスで抜けている気がする。
そして最後にもう一人。
その二人とコミニュケーションをとろうとして邪険に扱われ、ため息をついている人物――ロックオン・ストラトスは今、その人物の部屋の前に立っている。

「ロックオン、どうしたんですか?」
「ああ、少し話いいか?」

アレルヤ・ハプティズム、19歳。以上。
そう、本当にそれだけ。
マイスターたちの過去は、同じマイスターの自分でさえ知らない。何も知らないのだ。
彼と始めて対面したときは、目つきの鋭さからか鋭利な印象を受けたが、他の二人に比べると幾分か接しやすかった。
少なくとも自分の言葉に反応してくれる――たとえ、若干話が噛み合わなくても。
どうやらいつも、「ハレルヤ」という謎の人物(かどうかも怪しい)に話しかけているようだ。

「ごめんなさい、飲み物らしきものがこれしかなくて……」
「ああ、気にしなさんな。突然押しかけたのはこっちだしな」

差し出されたミネラルウォーターを受け取り、とりあえず一口。
前の二人は部屋にすら入れてもらえなかったので、この優しさが嬉しい。

「と言うより、こっちこそ悪かったな。何かしてたんじゃないのか?」
「いいえ、僕も丁度暇を持て余してたんです」

苦笑しながらアレルヤが指差す方向を向くと、そこにはベットの脇に積み上げられた数冊の本が。
どうやら、嘘や気を使ったのではないらしい。
ふと視界に入った本が、自分もよく読んでいる作家の本だったので、話の切り口はこれにしよう。
それからはその作家の本についてだとか、休日の過ごし方とか、他愛もない話をたくさんした。
アレルヤは見た目と違い優しい青年で、和やかな雰囲気で会話も弾んだ。
たまに出てくる独り言など、この際目を瞑ろう。慣れてしまえば、可愛いものだ。
しかし、どうしても感じてしまう違和感がある。
アレルヤはくすくすと楽しそうに笑っているようでも、目が――笑っていない。
まるですべてを拒絶するかのように、人と一定の距離を保つかのように。
近付けない。近付いてはいけない。これ以上、手を差し伸べられない。差し伸べたとしても、遠すぎて届かない。
瞳に宿る暗い闇に、喉がごくりと鳴った。

「ロックオン、どうかしましたか?」

アレルヤに話しかけられて、ハッとした。
どうやら少しの間黙り込んでしまったらしい。
目の前にはアレルヤの心配そうな顔と――
咄嗟に机に置かれていた手に触れると、アレルヤは目を見開き力いっぱい手を叩かれた。

「……ごめん」

拒絶された。
自分でも分かっていたはずなのに、近付いてはいけないと思っていたのに――あまりにも、アレルヤの手が震えていたから。
何かに怯えているとでもいうように小刻みに震える手を見たとき、どうしても手を伸ばさずにはいられなかった。
今度はあの暗い瞳を自分自身に向けられるのかと、恐る恐る謝るために下げていた頭を上げると、予想外にも目の前のアレルヤは目を伏せ顔を真っ赤にしていた。
ああ、どうして気付かなかったのだろう。
闇の深さに隠れて見えづらいが、不安に揺れる瞳。
まるで子どものように人に拒絶されるのを恐れ、人の温もりを求めている。
その不安を見られないように、ただ強がっているだけではないか。
他の二人よりもよっぽど素直で可愛らしいその様子に、愛しさが込み上げた。
手の甲のヒリヒリとした痛みとは反対に、自然と口元には笑みが浮かぶ。

「なあ、アレルヤ。お前のこと、もっと教えてくれ」

鋭い瞳ももう怖くない。
真っ直ぐにそれを見つめて、もう少しだけ近付いて。
届かない分は、一歩近寄って腕を伸ばせばいい。ただ、それだけのことだ。
頬に触れるまで、あと1cm。
心に触れるまで、あと――

Fin.

今回は折角のいい機会なので、ロクアレの出会い編を書いてみました。
あんな個性豊かなマイスターたちですし、最初は今よりもぎくしゃくしていたのではないかと。
刹那とティエリアの反応は、今と変わっていませんね苦笑

ロクアレも、たとえ後から夫婦と呼ばれるほどラブラブになっても笑、最初は初々しい気がします。
アレルヤはまだ人との付き合いに慣れていなくて、ロックオンもまだアレルヤに対する本当の感情に気付いていない。
しかし、段々と「届かないはずの距離」が近付いていって、お互いの想いに気付いていけばいいなと。
お題から少々離れてしまった気もしますが、とても楽しく書かせていただきました。

長々と書いてしまいましたが、ここまで読んでくださった皆様ありがとうございました。
そして、この企画を実施してくださった観苑様にも心からの感謝を。
これからも皆さんで、アレルヤを愛を注ぎまくりましょう!

2008.01.01

氷月
 


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