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めいん














(流石海軍の駐屯所だな。思ったより数が多い)



胡麻を散らかしたように点在する海軍を一瞥しつつも、悪態づいた。



まぁおれにはこんな雑魚、なんでもねぇが。



「“Room”……シャンブルズ」



さぁ、滅茶苦茶になれ。




何故おれがわざわざ、海軍の駐屯所にいるのか。


事の始まりは、一人の女が元凶だ。

しかし、女というにはまだ彼女は幼く(見た目は)元凶というにはアイツは無責任だ。



おれは此処に、アイツの出生データから何まで。アイリに関わる全てを奪いにきた。


もう此処にアイリはいらない。
データも痕跡も思い出も髪の一束ですら。



全ておれのモンだ。



「ハァ……」



駐屯所の裏門は浜辺と隣接している。



群青の空にぽっかりと浮かぶ銀の月とその白い月光に照らされて光る砂。


月の色を見て、なんだかアイリみたいだな。などと思って自嘲した。



たった1日会っていなかっただけで触りたくてかなり苛つく。


おれはイカれたのか?



パシャン。
海が不自然に鳴いた。



おれは即座に振り向くと、効かない夜目を必死に凝らす。


そこには、小さな人影。



あぁ、失敬。訂正。
“人”影じゃなかった。


「、人魚?」



まさか。

わざわざ魚人島からはるばるやって来たのか?そんな訳はねぇ。



逆光となっていて、顔はわからないがそのシルエットは人魚を型どっていた。



しばらくおれが驚いて放心していると、そいつは不意にこちらへ手を伸ばす。



そして容赦無くおれを海に引きずり込んだ。



しまった、と思っていてもあくまで人魚は浅瀬におれの半身をつける程度にしか力を入れていない。


まぁ十分、力は出ないんだがな。



思い切りぶん殴ってやろうかと思ってたら、胸ぐらを掴まれる。



そいつはそのままおれの胸板に甘えるように顔を埋めた。


人魚に知り合いなんていただろうか?



なんて悠長に考えていたら、あることに気付いた。



肩が小刻みに震えている。

甘えてるんじゃない、おれの胸で泣いてるんだ。


不意に、そいつが顔を上げた。



さらり 濡れた長い髪の間から見知った顔が覗いた。




「アイリ?」



そこにいたのは、愛しい彼女。











 

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