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めいん





殺しは病み付きになる など。


いつだかどこかのサイファーポールナインまあ略してCP9のネコが言っていたのを思い出した。



だが、#name_1##はその時容易に『はい、そうですね』など口にしなかった。

口にしたくなかった。



もちろん心の中では大賛成だったけれど。




(今日はもう、寝るのを諦めよう。
このまま起きていて、)



「わぁああああ!!!!!!!!」



あと数人、海兵でも殺そう。



そんなことを考えていた矢先、目の前が暗転した。

ぐるりと世界が一周して彼女は見ていたはずの地面から、いつの間にか月と対面した。


こんばんは、貴方はずいぶんキレイなんだね。なんて真摯な挨拶をして。


『っぷ、ごぼ…』

「よくも准将を!
お前、能力者なんだろう!??海に沈めてしまえばこっちのものだ!」




アイリが目を凝らせば、目の前にいるのは若い海兵。

どうやら下らない敵討ちでもとるらしい。溺死させるつもりか。



成人男性の全体重をかけられて海に引きずりこまれたら当然沈むわけで。



息はできない、痛い、しょっぱいし土臭い。



相手は笑ってる。

アイリとは違う、仇討ちが成功する歓喜と自分が助かることによる安堵。



「海に嫌われた悪魔め!」



ゴボゴボ。

口からは、幾多の空気の泡があふれていく。



(悪魔か。
認めざるを得ないから構わない。でも、)




『海は、このわたしを嫌ってなんかない』




茶番を終わらせるため、男の腹を思い切り蹴り上げて彼女の首を締める腕をへし折る。



男は驚きと痛みに相好を醜く歪めて叫んだ。



アイリは、ハートのクルーの所まで聞こえてしまっては都合が悪いと考え即座に口を塞ぐ。



彼の口に詰めたのは手頃なサイズの石。

死に行く人間に猿ぐつわなぞ勿体無い。



ひときしり男がくぐもった声で喚いて落ち着いた後、何か言いたげなので石を取ってやる。



すると彼は細い、絶望に満ちた声で問いかけた。



「なんで……?能力者じゃ、ないのか?」

『わたしは6歳からこの13年間ずっと、正真正銘の悪魔の実の能力者』

「なんで……な、んで…?」

『無駄だから』

(あぁ、駄目だな)

『わたしは、世界で唯一。海に愛された能力者だから』



(ゾクゾクす、る)



絶望に染まった男の瞳を覗き込めば彼は喉の奥で悲鳴をあげる。

死人に口は無くて良い。




『最期に言いたいことは』



彼の口から出たのは、なんとも愚かでなんとも間抜け。



「し、し死にたくない」

『ふぅん』



そして彼女は無情にその能力を発動させた。













 

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あきゅろす。
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