[携帯モード] [URL送信]

めいん














「な、泣き止まなくていい。とにかく落ち着け、いいな?」

『あい……ぐずっ』

「ええと、まずだな。やっぱり泣き止め!」

『っ、!?』



彼はほとんど自暴自棄になり、何の前触れもなしにアイリを抱き上げた。



それから、まるで赤子をあやすように高い高いと揺さぶったりと。

いつもの口数の少ない彼からは到底想像もできない行動をする。



アイリも、流石にこれには驚いてついポカンと開いた口が塞がらなかった。



「い、いないないばぁっ?」

『なぜ疑問系?しかも、顔が見えてない』



そう言って、アイリはペンギンの顔を覗き込む。


ガラスの双眸が見たのは、モノクロの隻眼だった。



「っ!」

『いたい』



突然アイリが顔を覗き込むものだから、彼は驚いて彼女を落としてしまう。




また泣き出すのではないかと挙動不審になりながらも、さらに帽子を被り直す。


どうやら彼は顔を見られたくないらしい。



『どうして、隠す?』

「……………怖くはないか」

『どこに恐れを感じればいいの』

「不快にもならんのか」

『特に』



アイリが言うと、彼は何かを決心したように深いため息を吐いて帽子を取った。




彼女は驚きも、特になんの反応も見せずに彼を見つめ続けた。



「そこまで無反応だと、逆に傷つく」

『そう?……わーペンギン意外と老けてるなぁー』

「着目点はそこか」




少しだけ眉の根に皺をよせてから彼は彼女の瞳を見つめ返す。



漆黒の短髪、
白と黒の隻眼、
少し歳を刻んだ、端正な顔立ち、
右目の下の大きな傷。



ペンギンはただ、口を真一文字に結んだまま黙りこくる。



『白と黒、……落ち着く色』



彼女はどこか、うっとりとした声音で言った。



すると逆に彼が驚いた様に目を見開いてから、微苦笑するのだった。



「そう言われたのは初めてだ。
他の奴には言うなよ。見せたのは船長とキャスケットとお前だけだ」


秘密、だからな。










 



秘密

なぜか彼がそう言うと新鮮味を帯びたように感じた。











 

[*Back][Next#]

8/10ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!