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めいん













ザァァァ………………。



『あ、め』



アイリは降り注ぐ小さな雫の名称を呟いた。



窓を叩く夜風が強くなったかと思った途端に、突然の激しい雨が降ってくる。


アイリはぼんやりとしながらその黒い滴たちを眺めていた。




一滴、また一滴さらに一滴もうひとつ一滴。



牢屋にいた時は、光も音も何も感じなかった。



だけど、今はただの雨にすら何故か感慨深く思える。



(……出会わなければ、きっと、)



彼女は、深く考えていなかった。



(こんなに辛い思いなんてしなかっただろうな)




胸中で呟いてから、気がついた時にはもう遅い。



『わたし、何思って……―』



自分は例え一瞬の迷いでさえ、なんてことを思ってしまったのだろう。

アイリは強い自責の念に駆られた。



胸が苦しい。
最低だ。
何を言ってるんだ。
どうかしてる。
痛い。
悲しい。




ごめんなさい。



ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。



『ぅ………ぁああ……、あああああ……!!!!!!!』



もう嫌だ。
こんな自分が嫌だ。



彼女はただ、悲しみに打ち引かれてベッドの上で悶え苦しんだ。



優しいローの香りがする布団の上に涙が滑り落ちて、色濃いシミをつくっていく。



すると、ドアがノックされる几帳面な音がした。


「ペンギンだ。入ってもいいか?」

『あい…?ペンギン……?』



返事をすると、相変わらず目元深くまで防寒帽をかぶったペンギンがドアを開けて入ってくる。



入ってきた彼が、アイリのぐしゃぐしゃになった泣き顔を見て驚いていた様に見えたのは少なからず気のせいではない。


「だ、だ大丈夫か?どこか具合でも悪いなら言え」

『ぐしゅっ、す、びばせん゛。
とまっ止まらない、ん、ヒック、れす……う、うぁあ!』




目の前で泣き崩れる女に慣れていないのか、ペンギンはあたふたする。



しかし彼女も泣き止むはずもなくただただ無駄な時間だけが過ぎていった。











 

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あきゅろす。
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