めいん 6 (頭、いたい) キャスケットを彼の自室へ帰してから、彼女は力無くベッドの上に大の字に寝そべる。 鼻をかすめたのはローの使用していた香水の匂い。 (そういえば、いきなり香水をかけられた) ――…これでもう、おれの匂いしかしない。…―― この香水は、あなたの所有印としてかけられたものなのでしょう? そうなら手放さないでよ。 朝方にアイリ自身でつけた傷がズキン、ズキンと疼く。 熱いと、痛いよ苦しいと喚いているようで。 さて、熱いのは傷か心か熱いのは傷か心か苦しいのは傷か心か? 彼女はぼうっとそんなことを考えながら ふ、と自嘲した。 あぁわたしはいつの間にこんなにも弱くなったのだろう? また苛々してきて、今度は手の甲にギリリと歯を立てた。 プツンという音がして、血が滲み出たのが楽しくて。 もっとやろうかな?と思ったけど。 キャスケットが船医がべポがペンギンが、悲しそうな顔してたから。 (止めておこう) 少女はひとつ、誰かを想うことを覚えた。 それがとても苦く、歯がゆいことも知った。 [*Back][Next#] [戻る] |