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めいん
















確かにわたしは、あの時。



まちがいなく彼の心の臓に向かって引金をひいた。



仕事だから、怒られたくないから殺されたくない死にたくないから。



だけど人は殺す。
わたしは死にたくないから人を殺すという、噛み合っている矛盾。



だけど、彼は死ななかった。



気づけば、へんな円がわたしを包んでいて。
気づけば彼とわたしの位置が逆になって。



「くくっ……背、小さくて命拾いしたなァ?」



たしかにそうだった。



先程撃った銃弾は、わたしの頭上を通りすぎたものの常人であれば頭を貫かれていたであろう位置にあった。



しかし次の攻撃に入る前にわたしはわたしの身体は身体が、ああ。




ら ば ら
     に?




『殺さないのですか?』



彼の手の上で返事をした。


だってわたしは今、生首になっている。痛みはない。けれども違和感。



『!っぇ、うえっ……けほっ…なに、す、るん…………』

「おれはお前を殺さない」



何の前触れもなしに地面に捨てられたかと思えば、思いきり血をどばどばかけられた。


勿論、トラファルガー・ローの血液。

それも大抵の人間であれば致死量やもしれないのに彼は平然と自分の手首を深く叩き切った。



どぼとぼ。
鼻をつく血の匂いに興奮を覚えるが、今はそれどころではない。



わたしは何のつもりだ、と問えばなんとも意外にも意外たる返答。




「お前を自由にしてやる。
だからおれに着いてこい」



どうやらわたしは有無を言わせない真っ直ぐな眼光にヤられてしまったらしい。



どうしてか、頷いてしまったのだから。




「お、……さて、海兵のお出ましだな。
絶対に動くんじゃねぇぞ」




彼はそう言うなりとっとと居なくなってしまった。

とりあえず命令通りに動かずにいれば頭上を飛び交う声。




「こりゃあ………」

「あぁNo.119、の死体だ」

「こりゃえげつないな、仕方ない報告しとくか。死体の処理は?」

「放っておけ。犬か何かが食うだろ」




知ってる。


わたしにはそこまで価値がないことも使い捨てだということも全て。



だけど、だけど。



「泣いてんのか?」



彼らが立ち去ったあと、再びトラファルガー・ローがこちらを覗き込んでいた。



わたしは動くなと言われてるから動かない。

彼は返答をしないわたしを見て深いため息をつく。



それから首をあるべき場所に戻しから、立たせる。

顎で着いてこい と指示されてわたしはその背中に着いていった。



ただそれだけ。




これが物語のはじまり













 


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あきゅろす。
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