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めいん









「アイリーっ?アイリってば?」

『なに』

「いや、すっごく怖い顔してるよ?」

『別に』




別に、なワケねぇだろ。
キャスケットは胸中でひとりごちた。




さっきからこのとおり、アイリの機嫌は斜めどころか急斜面な訳でキャスケットはため息しかでない。


船長だって男なんだから女を買ってもおかしくないと思うのに。



キャスケットはただ小さく首を傾げてアイリの後へ着いて行った。



『いた』



彼女はそう言って短い指を指す。



そこには、たしかに我が船長であるトラファルガー・ローと娼婦であろう女の姿があった。




仲良さげに腕を絡め、肉惑的な身体をくねらせながら彼の隣を歩く真っ赤なドレスの女。


しかし、その風貌は整っておりどこか気品さえ感じられる。




遠くから見れば美男美女の取り合わせである。



「キャプテンさ、今日は随分キレイな人連れてるね」



ベポの賛美の言葉に、アイリがあからさまに気を悪くする。



『わたしだって人工的に美目美しく作られてるんだよ。背さえ伸びればあんなのに負けやしない』

「そうかなあ?」

「ベポ、これ以上アイリをいちいち刺激してやるな」



ベポは訳がわからないと言った風におどおどする。



そうしている間に、2人は近くの宿屋へ姿を消す。



彼女はすかさず後を追った。



「なあ、アイリ。
良く考えろよ?船長だって淋しい時くらいあるさ、しかもこれ以上追ったら怒られ、」

『うるさい』



キャスケットの説得にも全く応じずにアイリは2人が消えた宿屋へ入っていく。



アイリが思いきりドアを開けたせいで、大きな音に反応した客と宿主がびっくりした顔でこちらを見ていた。



今日は厄日か。



『さっき、ここに入ってきた細身で変わった帽子を被った男と真っ赤な女。
どの部屋に入った?』



質問が唐突すぎるだろ。

しかもストレートすぎだ、見ろ 宿主が間抜けな顔をして困惑してるだろう。



キャスケットはそう呟いて、本日何度目かわからないため息をついた。









 

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