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めいん












アイリの顔に張り付いていた笑みは欠片も残らずに消え、代わりに氷よりも冷たいものになる。



報告に来たベポは未だに気づいていない。


しかしそれを見てしまったキャスケットは背筋からどっと汗が吹き出る感覚に襲われたのだった。


『ベポ、詳しく話して』

「え?う、うん」



今までの雰囲気より一転した彼女を見てベポはかなり困惑した。


ちらちらと彼女の顔色を伺いながら淡々と今までの経緯を話すのだった。



「キャプテンがね、しばらく舌打ちばっかして苛々してたんだよ。

最初は黙ってたんだけど、だんだん落ち着かなくなってきて、最後には「散歩してくる」っていって出て行ったんだけど……。

おれが見た時は知らない女の人と腕組んで歩いてたんだよねぇ。
あの人も新しく入団するのかな?」




どこかローの意図を履き違えているベポ。


彼が言い終える前にアイリは、先ほどの帽子を被りキャスケットとベポの腕を引っ付かんで歩きだしていた。



無言のままずんずんと2人を引っ張る形で甲板へでると、軽々と綱もなしに陸へ降りる。



着地したのは少し大きめの石が転がっている場所。


彼女が額に青筋を浮かべながら降り立った石は、ピキリという音を立ててヒビが入ったのだった。



「えーっと……アイリちゃん?」

『ベポ、どこで見かけた?』

「あ………あっち…」

『行くよ』



どうして巻き込まれなければならないんだ。



ずるずると半ば引きずられながらキャスケットは一人胸中で呟いた。




そして、彼女にこれが“嫉妬”だということを伝えようかとも迷った。


しかし命が惜しいので、言葉は口からは生産されなかった。












 

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