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めいん









「劇的☆ビフォーアフター的な?
いっそのことその長い髪も切っちまえ」




彼はケタケタと笑いながらアイリの長い髪を掴んで、冗談半分でハサミをちらつかせてみる。


彼女は乱暴に髪を掴まれて一度びくりと肩を震わせる。


そして、腕を伸ばしたキャスケットを力の限り一本背負い。




ふわりと浮かんだ彼の身体はボッスンという派手な効果音と共にベッドへと突っ込んでいく。


木とスプリングの悲鳴と彼が息を呑むのが重なった。




「いっっっっってぇええええ!!!!!」




打ち付けた背中を擦りながらベッドの上で悶える彼を鼻で笑い、その隣に腰かける。


大仰に騒いでいるキャスケットを突つきながら彼女は静かに言い放った。



『髪を、切るのは嫌』



そう言って、口を尖らす。
彼は首を傾げながら「なんでだ?」とその理由を問う。



アイリは淋しげに小さく笑ってから遠くを見つめた。


目線の先は壁しかないもののどうやら昔を思い出しているらしい。





『……前のご主人様は、長い髪が好きだった。

わたしが髪を切るのは許されなかった。
その人は海賊だから。いずれまた会ったときに短い髪だと何されるかわからない、怖い』

「んなモン、怖くったっておれらが守ってやるのに」

『無理』



淀みのない否定だった。



『ご主人様はわたしの何倍も強いから』



誰も勝てない。
ぽつりと呟いた憂いの言葉にキャスケットは顔をしかめざるを得なかった。



アイリは眉を下げて不安そうに肩を抱いた。

その目に明らかな恐怖が写っていたのをキャスケットは見逃さなかった。



「なあ、その“ご主人様”って、」

「キャスケット!!!!」



突然、バンという大きな音がしてドアが開いたかと思えば息を荒げたベポがそこにいた。


その様子はただ者ではなく、部屋の空気が一気に冷める。




キャスケットはベッドから立ち上がるとベポに向かい合い、真剣な声音で概要を聞いた。



「あのね、キャプテンが…………女の人と一緒にどっかに行っちゃったの!!!!」




キャスケットはその言葉に氷ついたアイリを見て波乱の予感がした。













 

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