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めいん










一番大変なのはそれからだった。






「おい?アイリ、もしもし?
……おっかしいねェ〜」

『どこぞのボルサリーノさん?』

「だれだよボルサリーノさん」

『海軍大将黄猿』

「遭いたくねぇ。
つーかさ、アイリさん何時になったら離してくれますか?」



2人がひときしり泣いたのを見届け、再びクルーたちはそれぞれの持ち場に着く。



しかし未だにアイリはキャスケットにしがみついたまま離れないのだった。



そんなアイリを可愛らしいと思いつつ、キャスケットにも仕事はあるのだ。



「首いてぇよ、首」



微苦笑してみせたが、それを凍りつかせたのは1匹の子兎のような彼女。



『……キャスケットは、わたしと一緒にいるの、ヤ?』




普段より甘ったるい声で、目を潤ませてみればキャスケットは簡単に鼻の下を伸ばして引っ付いていることを了承した。



そう、承服するしかないほどアイリは魅力的だった。



しかし、アイリは突然誰かに首根っこを捕まれたかと思えばそのままキャスケットから離された。



首が絞まりつつ、宙にぶら下がって後ろの人間を睨む。



こんなに乱暴をするのはこの船にたった一人しかいない。




『なにロー?』

「何、じゃねえ。何時までくっついていやがる」



苦々しい口調と表情でローが言ったが、アイリはそれにそっぽを向いた。



『いや。離して、今日はキャスケットの隣にいたい』


「キャスケットの意見は?」





キャスケットをナイフみたいに睨みながらローは低く唸る。



それは言外に彼に「嫌がれ」としていた。

しかし、キャスケットはあっけらかんとして「別に構いませんよー」と笑顔で答えたのだ。




後でバラしてやる。

ローはぽつりと胸中で呟く。






アイリが自分の隣にいない。

それだけのことなのに、ローはどこか胸の真ん中にぽっかりと穴が空いたかのように思えた。













 

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