[携帯モード] [URL送信]

めいん










2人は、皆が待つ船へと帰る。


彼女ははじめ不安げに眉を下げたが、ローは大丈夫だといって小さな身体を片手に抱き上げた。




そのまま綱もなしに軽やかに船へと飛び降りたのだった。



そんな2人が降りてきたのを見て、一斉にクルーが寄ってきた。



「おかえりなさいキャプテン、アイリ!」



アイリが見たのは、クルーの安堵や安らぎの表情。


ベポも、ローの近くへ駆け寄ってくるとアイリの無事な顔を見てへにゃりと笑うのだった。



『……ロー降ろして』




しかし、皆の笑顔には添えられずアイリの表情はずっと憂いを帯びたまま。


ローが無言で彼女を降ろしてやればそのままキャスケットの元へとアイリは歩いていった。



キャスケットは、さっきみたいに笑ってくれなかった。



能面のようにただじっとアイリを見つめていた。



アイリが真っ直ぐにサングラス越しの瞳を見つめて、やがて腰を折った。



『ごめんなさい、キャスケット』



彼女はキャスケットの前まで歩み寄り、それから頭を深々と下げて謝罪をした。


長い銀糸が、重力につれてさらさらと流れた。



それから頭を下げたままで、彼女はぽつりぽつりと話し始める。



『首……痛い、よね。
切っちゃってごめん。ほんとにごめんなさい』




キャスケットは大きくため息をついてから屈み込む。


ちょうど視線がアイリと同じようになるくらいの高さになった。



アイリはサングラス越しに見えるその瞳の中に悲しみが滲んでいるのが見えた。



「船長、先に謝っときます。すんません。んでアイリもごめん」



疑問を揺らす前に、乾いた音がしっかりと甲板中に響き渡った。



感じとれたのは、左頬の痛み。
見えたのはキャスケットの涙。
聞こえたのは彼の悲痛な声で。










 


[Next#]

1/10ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!