[携帯モード] [URL送信]

めいん











自分が降り立つと、キイィと木特有の甲高い音。

花畑だと思っていた下を見やればそこは実は海だった。



甲板にいるはずなのに、海。



そこはまさに血の海だった。



歌を口ずさんでいた少女の正体はやはりアイリ以外の何者でもなくて。


彼女はローの存在を認識すると、笑みを一層色濃くしてローの方へと向かい直した。



彼女の瞳は、今まで見たことがないくらいに輝いていた。



『ろぉ!!!!』




マカロンよりもマシュマロよりも柔らかく、甘く笑んでアイリはローへ走っていく。


そのまま跳んだかと思えば、小さな子供がじゃれるかのようにローの腰回りに抱きついてきたのだ。



『ロー!見て見て!わたし、こんなにいっぱい殺したの!!!
ね、すごい?すごいかなぁ?』



まるで向日葵のように微笑んだ彼女にどこかいとおしささえ感じる。

だが、少女はこの惨状を喜んでいるのだった。



隙間さえない、床一面の赤。


積み重ねられた無数の死体の山にはどれも顔がついていなく、代わりに船のマストには人の顔が皮ごと剥がされたものが貼り付けられている。




いっそ芸術性まで感じさせられるその光景に、ローはただ言葉を失った。



そして何よりこの惨状を産み出した少女本人は返り血ひとつ浴びていなかったのだから。



『あのねー、せっかくペンギンとキャスケットがこれ作ってくれたでしょ?』



風船が宙を遊泳するような、そんな軽いふわふわとした声調。



『わたしの好きな白だし、汚れないようにがんばったの!』



両手を身体の前で目一杯広げてみせ、そこで見せつけるかのようにくるりと一回転。


確かにどこにも血は付着していない。



「あぁ、凄い、な」

『ほんと?えへへ、嬉しい』



他の言葉が見つからなかった。

だって少女は、誉められることを楽しみにしているのだから。




ローは黙ってその小さな身体を抱きしめる。

彼女は嬉しそうに細い腕を首に回して、顔をすりよせるのだった。



『あれぇ?』



突然、少女の身体がぴくりと震えた。




『あれ、あれ?……わたし、あれ……?』













 

[*Back][Next#]

8/10ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!