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めいん









「コックから聞いた。敵船はどこだ?」




アイリが海へ飛び込んでから暫時が経ち、ローを筆頭にしたクルーらが甲板へとやってきた。



キャスケットは無言で遠くに見える海賊船を指差した。


それから、各々に武器や大砲の準備をする彼らに静かに、しかし曇りなく言った。



「全員、戦ったら駄目だ」



予想だにしない彼のその言葉に、全員が手を止めた。


しかし真剣なキャスケットの声音に何か理由があるのだろうと、彼の2の次を待つ。




「どういうことだ?
……あと、アイリは何処にいる」

「敵船へ、戦いに行きました」

「1人で行かせたのか」



ローの言葉と視線に、怒気が混じった。


しかしキャスケットは黙って自分が着ていたつなぎのファスナーを少し下ろし、首を見せた。



そこにあったのは、薄いけれども確実に動脈を狙った場所にある切り傷。



「アイリからの伝言です。
『邪魔をすれば敵味方関係なく殺すから』」




その言葉と共に、悲鳴の合唱が聞こえた。




それは確実に男の物だったが、どこか布を引き裂くように甲高い。


敵船の方角に双眼鏡を向けて見れば、そこは凄惨としか言いようのない光景が広がっていた。




ローは双眼鏡を覗いてから視線を外し、嘆息混じりに呟いた。



「敵船の進路は、このまま此方に向かってる。
接触する前にアイリを連れ帰る。場合によっては援護だ」



双眼鏡を覗いた人間は、顔を歪めながら小さく返事をする。

それから全員武器をしまうのだった。



(かすり傷ひとつでも負ってみろアイリ。お前を叱ってやる)



ローは心の中でそう呟き、右手に担いだ長剣を強くにぎりしめた。




 

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