めいん
10
『………………………ロー』
ぽつりと呟けば、彼は満足気な表情で笑ってみせた。
彼女はそれきり、しばらくの間ずっと口を閉じていた。
そんな彼女を見てから、時計を見やれば短針が8の字を刻んでいた。
「そろそろ朝食の時間だ。食堂に行くぞ」
『朝にもご飯?』
「1日3食出る。もし飯を残したらコックに包丁もって追いかけられるぞ」
気をつけろ。
真面目な顔をししながら冗談を言うものだから、アイリはついローが追いかけられている所を思い描いてしまう。
あくまで笑いを堪えていたのだが、ここぞとばかりにローが追い討ちをかけてきた。
「人参が出た日は楽しいぞ。
キャスケットとコックの命がけの鬼ごっこが始まるからな」
『ふっ……あははっ!!!その、ニンジンが出る日が楽しみ』
ついにアイリは身体をくの字に曲げて笑ってしまう。
「許してくれぇー」と泣き叫びながら船内を駆け回るキャスケットは容易に想像できたから。
ローも喉の奥でくつくつと笑うと、早く行くぞと彼女を促した。
今日の朝は、キャロットサラダだった。
[*Back]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!