めいん
8
「あー……ところでさ」
『なに』
突然、ペンギンが慌ててくるりとこちらに背を向けた。
キャスケットも言い辛そうに頬をかいて横目でこう告げた。
「あのさ……」
「お前はそれを何だと思ってる?
つなぎは握って見せびらかす物じゃなくて着るものだぞ」
突然聞こえたのはローの声。
後ろを振り返れば、腕をくんで壁にもたれかかっている彼がいた。
嫌な薄笑いを浮かべて。
「失念していた」
自分の身体に視線を落とせば、うすい下着姿のままだったことを思い出す。
特に恥じらいなどは感じなかったものの2人の反応には苦笑いものだった。
まだ幼い子供であろうと船内を裸に近い格好で闊歩するのは不具合があったらしい。
ペンギンなど、帽子に隠れてよく見えないがちらりと見えた頬はゆでダコも仰天しそうなくらいだった。
意外にも、女性に免疫はないらしい。
「お前、おれに裸見られるのは嫌なくせにそんな格好で船内歩き回れんのかよ」
『トラファルガーさんが嫌いですので』
「なんだとこら」
『冗談です』
冗談といいつつ全て真顔で言いのける。
その場でつなぎに着替え、アイリはどこか嬉しそうに両手を広げてみせた。
似合う?と言わんばかりに。
『背中の烙印と傷などを見られなければどれだけ肌を露にしていようが構いません』
「むしろそこは裸を気にしろよ」
キャスケットがすかさずツッコむが彼女は、「うるさい」と文字通り一蹴してしまう。
「さっさとお前はおれの部屋戻れ。
それから濡らした床、ちゃんと雑巾で拭け」
『了解致しました』
ローは彼女の背中を押し、部屋へと促した。
それからユラリとキャスケットとペンギンの2人を睨みつけると
「…………覚えてろよ」
ぼそりと、傍にいるアイリにでさえ聞き取りにくい声だったが2人を震え上がらせるには十分だった。
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