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めいん









『あの、トラファルガーさん』




アイリは、キョロキョロと辺りを見回しながら聞いた。



彼は、どうした と言いながらジーンズを履く。


男性用にしてはやや腹回りのサイズが小さいそれだがローにとっては大きいらしく、半分ずり落ちていた。




そんな彼の下半身に焦点が合うと、アイリは慌てて他所を見る。


それから簡潔に自分の言葉を紡ぐ。



『わたしの衣類が、見当たらないのですが』

「そこに用意されてなかったか?」





そう言われて、改めて指差された方を探してみるがそれらしき物は見当たらない。



『いいえ、ありません。
あるのはトラファルガーさんが着衣していたものと、どなたかの服だけです』

「誰かのって何だ。
船長室のバスルームに自分の服を置いていくチャレンジャーでもいるってか?」

『死を省みない勇敢な方の様です。感服致します』



冗談めかしに笑えば、ローの腕が後ろから伸びてきた。



腕から手の甲にかけてびっしりと刻まれた刺青。

彼女は少しの間だけ、その刺青に見初められていた。



「おい?聞いてんのか」

『いいえ』

「……素直すぎんだろ」



どうやらローはずっと話しかけていたらしく、忘我していた自分を叱咤した。



するとローは先ほどの服をアイリに押し付けたのだ。



「お前の服だ」

『え?』

「……………」

『?、だって…わたし、の?服っ、て……これ…』



今まで着ていたワンピースに負けないくらいの白。

アイリは服を広げてみるとつなぎであることが分かった。



もちろん、胸にはハートの海賊団のマークが。



鏡の前でつなぎを重ねて合わせてみれば、自分の身体とぴったりのサイズ。



『これ……』

「お前が寝てる間、ペンギンとキャスケットに作らせた。
あいつら地味に裁縫が好きだからな」



それを聞いた途端、アイリは脳が物事を考える前に船長室から飛び出していった。




これには素直に、自分でも驚かざるを得なかった。



体もまだ拭いていない。
ローに礼もしていない。
服もまだ着ていない。



『はっ、ふ、はぁっ』



けれども彼女は、肺と足を駆使して走った。



2人に礼を言うために。



『はっ、しらッ、なきゃぁああ』















 

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あきゅろす。
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