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めいん









『どこに連れていくおつもりですか』



アイリは引きずられたまま聞いた。

唇には笑み、額にはくっきりとした青筋、眼差しには殺意を浮かべて。



そんな彼女とは裏腹に、いけしゃあしゃあとローは一言で纏めてしまう。


「バスルーム」

『ああそうですね。では質問を変えます。
何故わたしを連れていってるのですか』



ふぁ、と大きくだるそうに欠伸をするだけで返答する気はないらしい。


アイリは服を着たまま乱暴にバスルームに放り投げられ、壁と思いきりキスをする羽目になった。



『…あの、もう一つつかぬことをお聞きしますが、』

「なんだ」

『どうして服を脱ぐんですか』



すでに上着を脱いでいるロー。

上半身が露となり、彼女は頭が痛くなるのを感じた。



『薄い胸板ですね。見た通り貧弱そうなから、』

「早くお前も脱げばどうだ?
それとも、風呂には服を着たまま入るのがいいのか」



今こいつ何て言いやがった?


危うく暴言を吐きかけ、思わずローを湯船に沈めようかと考えてしまったが、慌てて平静を装う。



頬がひくつき、目の前の男を撲殺したくなる。



『抱かない代わりに一緒に入浴ですか?
随分な趣味ですこと』

「お前、臭うんだよ」



失礼な。



ローから返ってきたのは意外たる言葉でやや存外だった。



確かに、食べさせてもらうことはままならなかったが入浴だけは存分にしていた。

昨日だって風呂には入ってきたハズだと彼女は顔をしかめた。



そんな彼女の心境を悟ったのか彼は小さく呟いた。



「男の香水の匂い。色んなの混じってて気持ち悪ぃんだよ。
あと、血の匂いもな」




ああ、それか。

仕方ないよ。



彼女は胸の内で叫びながら囁いた。



だって生まれつき血を浴びたのだから。

だって沢山の男を相手にしたのだから。



それは赦してよ、!










 

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