めいん
10
そして、現在はアイリ船長室の前にきている。
木でできた温かみのあるデザインの扉には“KEEP AWEY”の文字。
『……………、…?』
少女は文字が読めなかった。
簡単な単語はわかるものの、文となるとどうも理解しきれなくなる。
アイリは特に気にもせず、熟睡中のローがいる部屋をノックするのだった。
『おはようございます。起きてください、朝です』
少し大きめの声で言う。
しかし中からの応答は、一切合切ない。
彼女は断りを入れてから、カチャリとドアを開ける。
そこにはやはり、布団にくるまったまま微動だにしないローがいた。
不気味なほどに静かな寝息は、彼の生死を疑いたくなるほどだった。
『起きてください、』
キャプテン?船長?キャプテン・ロー?トラファルガー船長?トラファルガーさん?ローさん?お頭?トラファルガー様?ロー様?外科医?
なんて呼べばいいんだろう。
頭の中をぐるぐるぐるぐると、呼び名候補と言う文字の羅列が右往左往する。
それに困惑しながらもアイリはとりあえず彼を揺さぶり続けた。
起きる気配は皆無。
顔をしかめる所か、身動ぎひとつせずに眠るローに彼女は些か苛立ちをおぼえた。
『あぁもう、』
焦れったくなってきて、ついには彼から布団を剥ぎとる終い。
けれどもやはり起きないのがトラファルガークオリティであって。
ふ、とアイリの脳内で彼に対する呼び名が決まった。
ローはいちいち呼び名などで気にしないとは言っていたものの、ここは無難な呼び方をすべきだと彼女は考えたのだ。
『起きてくださいご主人様』
がばっ、と破竹の勢いでローが起き上がった。
彼のその腕に鳥肌がたっていたのは言うまでもない。
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