めいん
9
「あ、キャスケット、アイリちゃん。お帰りー」
『ただいま、ベポ』
「………………」
帰る時。
もっと高い方がいいだの。
揺れが大きい。乗り心地が悪いなどと野次を飛ばしていた少女は、愛らしい白熊の前では堂々と猫を被ってみせた。
そのお陰でキャスケットは肩の痛みが半端じゃない上、彼女の豹変ぶりには言葉を失った。
「こんなに朝早くからどこ行ってたの?」
『キャスケットと一緒にお散歩だよ。………ね?キャスケット』
「あ、うん。ハイ。お散歩に行って参りました」
楽しそうな表情で、散歩についてベポに語る少女。
キャスケットはあくまで本当に小さく「猫被り」と呟いた瞬間、アイリは彼の脚を踏みつけてやった。
キャスケットは声にならない悲鳴をあげてそこら中を転げ回る。
ベポは、全くもってわからないといった顔で首を傾げるのだった。
そんな彼はさておき。
ベポは思い出したと言わんばかりに手を叩き、アイリに向かってこう告げた。
「あのさアイリはキャプテン起こして来てくれる?
おれ、ちょっと洗濯物取りに行かなきゃだめなんだ」
『…………えぇ…?』
思わず本音が出た。
その答えにベポは微苦笑せざるを得なかったが、そのまま甲板へと出ていってしまった。
アイリは仕方なく船長室へと向かおうとするが、その前にキャスケットからの忠告というか警告が入った。
「寝起きの船長には気をつけろ」
なんだか嫌な予感がした。
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