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めいん










「アイリ、肩車してやるよ!!」

『カタグルマ?』

「言っておくが、肩が車輪に代わるワケじゃねーぞ」




代わってたまるか と思いつつアイリは笑みを漏らしてしまう。



キャスケットはそのまま少女を軽々と抱き上げると自分の肩へと乗せてみせた。




彼女は大人しく彼の頭にしがみつき、落ちないようにしている。




「どうだ、高ぇだろー!!!!」

『微妙。キャスケット小さいから』

「降りろ」




憎まれ口を叩いたものの、キャスケットの上から見た世界は彼の言った通り、すごく高かった。



太陽に一段と近くなれた気がしてどこか嬉しくなる。



そのまま船に戻るとき、アイリは彼にこう言った。




『キャスケット』

「んー?」

『わたし、まだ自分が分からない』

「自分が?」

『そう』



無理に語尾を可愛いらしくするのも、作りものの笑顔を向けるのも止めてアイリは言う。



彼は何も問わず、その質問にだけ答えた。



「おれだって、自分のことなんかわかんねぇし。
こんだけ生きてきても象徴的にしか分からないんだよ。

けどな、たった半日でもお前の性格は分かったぜ?」

『わたしは、何?』




急かすようにサングラスをいじってやれば、止めろと彼は小さくたしなめる。


それから弾むような言葉を次々と紡ぎだしてみせるのだ。




「アイリは、
船長と一緒でプライド高いだろ。
んで地味に努力屋でいて……実はサディストだな。

でも、まだまだ弱っちくてお子様」

『他は?』

「何事にも順応しようとして、必死に仮面かぶろうとする。
背伸びして大人ぶっててもなりきれてなくって。

だけど、人よりちゃんと感謝する気持ちとかを大切にしようとするいい奴」



そこで1度切って、彼はくしゃりと歯を見せて笑った。




「あと、キャスケットっていうカッコいいお兄さんが親友にいる!」

『え?キャスケットって誰』

「おい!!」



彼の嘆く声を引金に、2人で一斉に笑った。




初めての、この気持ち。
どこか困惑してしまうけれど人を殺してるのより何万倍も気持ちよかった。










 

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あきゅろす。
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