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めいん











おどけた口調。
絶えることのない笑顔。 面白い会話。




不思議な男。

アイリの、彼に対する感想はそれだけだった。



船を降りて、少しした所にある街へ脚を運べばキャスケットは真っ先に計算の仕方と文字の読みを一通り。

それから金の使い方を親切に教えてくれたのだ。


「これは?」

『500ベリー硬貨。たとえばあそこにある林檎を2つ買ったら、120ベリーのお釣りが返ってくる』

「正解!アイリは読み込みはえーなぁ」



関心関心と 笑顔。



彼は立ち止まってから、わしゃわしゃと乱暴にアイリの頭を撫でた。



アイリには、何をされたのか分からなかったが。



(頭を触られた。少し力んでいたからあれは叩いたのだろうか。それも笑顔で。もしかしたらこの男は顔の筋肉が強ばって、笑顔しか作れないのかもしれない)



悶々と難しい顔をしている少女の心境を悟ったのか、彼は頭を撫でるという行為の意味を伝えるのだ。



「こうやって、頭に手を当ててぐりぐりされんのは“撫でられる”っつーんだ。
主にいい子だったり誉められてるときに撫でられるモンだぜ?」

『わたしはいいこ?』

「あぁ」




彼は再び歩き出す。


アイリは遅れを取らぬよう、慌ててキャスケットの後に着いていった。




「お前は偉いよ。
ペンギンに言われたことにも1つ1つ直そうとして。
慣れないことにも頑張って順応しようと努力して。

今までも、文句言うことさえ分からずに独りで壊れずに闘ってきたんだろ?

まだ小さい癖にな」




鼻の奥がツンとして痛い。



どうしてだろう、胸が痛い。外傷は見当たらないはず。胸が痛い。帰ったら薬をもらおう。




「よく頑張ったな、アイリ」




見上げればそこにあるのは、眩しすぎるくらいの笑顔。


なぜかそれは霞んでいてよく見ることが出来なかった。














頬を伝う雫が“涙”だということさえ彼女はしらない。













 

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