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めいん









船の中は意外と小さかった。



海軍基地なんてものとは、既に比べ物にはならかなった。

船内には必要なくらいの部屋しか揃っていなくて。
中には同室同士のクルーも多いくらいだった。




船員もそんなに百といる訳でもなく、せいぜい二十名強いるかいないか程度の所を見ると、やはりローは無駄が嫌いなようだ。



アイリが道順と、各クルーの部屋を覚えるのにはさほど時間はかからなかった。



「No.119、か」



聞き慣れぬ男の声が
ふいに、その名を呼んだ。



一気に背筋が氷つく感覚。

頭のてっぺんから足の先までピシリと動かなくなり、石と化してしまう。


アイリは微動だにせず、自分の背後にいるであろう男に問うた。




『どなたでしょうか』

「……この船の副船長だ。皆からはペンギンと呼ばれている」

『ペンギンさんですか。
ずいぶん割りに合わず可愛い名前ですね』



嘲笑うように言ってやれば返ってきたのは鼻で笑う声で。


アイリはようやく警戒を解き、ゆっくり男に向き直った。



ハートの海賊団独自のつなぎ。

顔が見えなくなるくらい深く被った帽子には“PENGUIN”の文字。



そこには壁にもたれかかり、こちらをじっと見つめている男がいた。



全く感じられなかった気配と、彼に染み付いた血の匂いからはただの雑魚じゃないことが窺える。



『それで、ペンギンさん。
何かわたしにご用でしょうか』

「何もない」

『……そうでしたか』



だったらいちいち嫌な呼び方をしてまで呼び止めるなと言いたくなった。


その言葉をぐっと胸中で噛み殺していると聞こえたのは意外にも意外すぎるセリフ。



「そう呼ばれるのが嫌なら、自己紹介の時にその名を名乗るな。
あと、ベポに言われたことを」

『は、い?』

「敬語だ」



ペンギンと名乗った男は、それだけを言うと背を向けて去って行ってしまった。



アイリの胸に残ったのは、複雑なきもちが一握り。














 

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