めいん
9
真っ黒な上着に真っ黒なズボン。
それらはお世話にも綺麗だとは言い難く、裾や袖がボロボロになっていた。
『相手は』
最低限の食事を終え、彼女は男に聞いた。
彼は手配書を手渡してやり、それから今日の仕事内容を話した。
「北の海出身。ハートの海賊団船長、トラファルガー・ロー。
懸賞金2億ベリー」
『仕事は』
「こいつの抹消だ」
『何処に』
「ここから近くをのんびり散歩していると聞いた。そう遠くはない」
『わかりました』
彼女は男に向かって一礼をすると、すぐに踵を返して歩き出す。
きゃらきゃら、きゃらきゃらと涼しげに鎖が鳴り響いた。
『………トラファルガー・ロー、トラファルガー・ロー、トラファルガー・ロー、トラファルガー・ロー、トラファルガー・ロー、トラファルガー・ロー』
久しぶりに出た外は、まだ朝だと言うのにざわついていた。
ぎらぎらと彼女の目を焼き付ける太陽も
ざわざわと彼女の耳をつんざく声も
アイリにとっては全て灰色の一色にしか見えなかった。
まるであの牢屋のような。
『いた』
案外、早くトラファルガーは見つかった。
本当に海賊とは思えないくらい呑気に店から店へとぶらついていたのだ。
周りに仲間らしき人間もおらず、どうやら彼一人のようだ。
アイリは手間が省けたと言わんばかりに内心よろこんだ。
はじめまして。
そして、さようなら。
彼女は腰の拳銃をゆっくり引き抜いた。
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