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めいん







『あの、そろそろ本当に重いです』

「いっそそのまま潰れやがれ」




正直な本音だった。
たった今、自分を罠に陥れた少女は未だ悠々と笑っていた。



挙げ句の果てには強姦魔だのロリコンだのとからかう様。



そろそろ苛立ちが頂点を向かえ、ぐっと彼女に顔を近づけてみせた。

アイリの表情から笑みが消え、表情が強ばった。



トドメを刺すようにとおれは耳元で低い声で、静かに唸る。



「あまり大人をおちょくってると……このまま、本当に食うぜ」

『…………―』



少し強めに耳たぶを噛むと、彼女の身体が一瞬だけピクリと反応した。


形成の逆転に笑い、おれはようやくアイリの上から退いてやる。




その時に見えた彼女の表は冷めきっていた。



何も写さないガラス玉のような瞳。

抵抗することを止めて、だらりと垂れた四肢。

1mmたりとも動かない彼女の姿には、思わず人形かと勘違いしてしまいそうだった。



『わたしをだきますか』



感情を感じられない一定のリズムの言葉たち。


それは彼女の口から紡ぎ出されたのか分からないくらいに冷たかった。



けれどおれは、くしゃりと荒くアイリの髪を撫でただけだった。

何故か無性に、そうしたかった。




「お前なんか抱くほど、おれは飢えちゃいねぇ」




鼻先で笑ってやれば、どこか緊張の糸が切れたように彼女は目を閉じる。



もうベッドのことなど気にせず布団にくるまる彼女は、どこにでもいる女の子そのもの。



おれは何となく、彼女が寝息を立てて寝はじめるまでずっとその肩を抱いてやっていた。














「寝たか?」




規則正しい寝息を立てるようになった彼女。

さて行くか、と身体を持ち上げる。



が、身体はなかなか起きてくれない。むしろ何かに引っ張られているような。



「おい」



おれのパーカーを握りしめているのは、紛れもなくアイリ。



そっと離してやろうかとも思ったが、尋常ではないその握力には諦めざるを得なかった。



「おれはどこのお父さんだ……」




そう、深くため息をついてからアイリと共に眠りにつくしかなかった。













 
 

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