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めいん










希望。



おれの脳裏をよぎった言葉は即座へ確信へと変わる。



今まで欠陥していた代わりに一気に頭の芯が冷えていって、今まで以上に必要以上に冷静になっていく気がする。




アイリは死んだ。

心肺が停止したのを確認したのも致死量の血を流しているのを見たのもそんな彼女を連れ帰って手術したのも腐敗しないように冷凍室へ閉じ込めて氷漬けにしたのも。



全部、おれ、の、しわ、ざ。




耳に砂が詰められたんじゃないかと錯覚してしまうほどの不快なノイズに歯を食いしばって堪える。




破綻するのはもういい。








今は“現実”とやらを見てやる。




情けない顔のおれ。
心配するクルー。
氷漬けのアイリ。





だが氷漬けのはずの彼女の血色は生きている人間のそれと同等で。


本当に死の外科医が聞いて呆れるなと自負しながら嘲笑して全ての考えを一蹴した。




おれはもう一度金槌を力一杯振りかざしているペンギンを制してから、ゆっくり息を吸った。




「アイリごと割る気かてめぇ」





キョトン、と
そんな間抜けな顔をしたペンギンにできるだけいつもの笑みを浮かべて命令を下す。




もう迷わない。
壊れたりしない。



不安定に安定するのは止めた。



安定しなくてもいい、あとはただ必死に踏ん張るだけだ。





「クルー全員集めてこい。
あと、湯を沸かせ」

「アイアイ船長」







さて、と。


どうやらお姫様を氷漬けにしちまったのは王子の方だったみてぇだな。













 

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あきゅろす。
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