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めいん










もう、一寸の迷いもなかった。



わたしは未だ挟まるベポへ笑みを向けてから、その檻をそっと掴んだ。


徐々に力を加えていくだけで檻はまるで飴細工のようにぐにゃりとその姿を変えた。



硬度ではダイヤモンドさえも霞んでみえる海牢石をいとも容易く壊してしまったことに驚嘆しているのか、ベポはあんぐりと口を開けていた。




海牢石なんて関係ない。


海は能力者の敵だけど。
海はわたしの味方をする。



その類似品であるたかが石ころごときに無力化なんてするわけがない。



意味ない。意味ない。



灰色の世界へ踏み出す。



正直、ドフラミンゴ様のせいで身体はボロボロだし立つのさえ結構苦だった。




でも、けれどだけれども。





『お待たせ、みんな』

久しぶり。

『ローもお待たせ』

寂しかった。

『あいしてる。だいすき』

ようやく言えた。

『だから、』

そう。

『死ににきた』

これ本音。











「上等だ」




彼はニヤリと嘲笑った。


その笑みは出会った時から今に至るまで、健やかなるときも病める時も関係なく。


嫌悪さえ感じさせる愛しい笑顔。




ローはわたしを抱きしめてくれた。



甘い言葉の羅列も、長ったらしい口づけもなかった。





2人とも言葉の1つさえ交わさずにただ互いの存在を確かめあった。








舌打ちと、
歯ぎしりの音が聞こえた。






「それがお前の答えか」








驚くほど冷たい声だった。



わたしは肌に冷たく刺さる視線と、耳をつんざくような殺気を感じながらもゆっくりと振り返った。



不思議なことに、全く恐ろしくはなかった。




「それがお前の選んだ道か」

『そうだ』

「そっちへ行くの、か」

『わたしはローを愛している』

「、No.119」

『ちがう。
……わたしは、アイリ』




ドフラミンゴ様の視線が、あの独特のサングラス越しに揺らぐのがわかった。


彼の声からは、普段からは想像もできないほどの絶望が滲みでているのがかすかに感じられた。




掠れた声の全てを。
わたしは拒否してみせた。

ドフラミンゴ様はただ静かにわたしを見つめていた。


わたしもまたドフラミンゴ様を静かに見つめついた。



ただ1つ違うのは、
すぐ隣にいる仲間の数。




愛する人間との距離。





わたしはみんなに背を向けていたけれど、みんなの表情も感情もすべてわかるような気がした。





きっと。
きっと今なら、何でもできる。



独り佇むドフラミンゴ様に、わたしは唇を開いてみせた。








代わりに、言葉は紡がなかった。




唇は酸素と二酸化炭素のみを交互に混ぜ合わせながら肺へ送ったり肺から送ったりしていた。







言葉は不要だったから。






































『さ』

『よ』

『う』

『な』

『ら』































そう言ったつもり。













 

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