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めいん










「ククッ………
こんなイイ女泣かすなんてよ。
ドンキホーテ屋は随分と罪作りな男だなァ?」

「ア?」




聞こえるのはアイリの泣き声だけになったころ。


ローが突然声をあげて笑いはじめたのだから、牢屋内には奇妙な空気が流れた。




しかし当の本人は、ただ愛おしそうにアイリの頭を撫でながら肩を震わせて笑うだけなのだからドフラミンゴも辟易したような表情を浮かべた。



「悪い奴!!ほんっと!
あーあ駄目な奴だなお前はよ!!!!」

「フッフッフ…!
ついにトチ狂ったかよ?」

「そう正解だ!間違ってない!」




ドフラミンゴが茶化すように嘲笑えば彼は更に高らかと笑うのだから。


こればかりには、全員が目を張るしかなかった。




アイリを除く、全員。




「おれはオカシイ。そうだろ?
ヤク中なのもいいところだ」

「………」

「もうアイリがいねぇと生きていけないだろうな」
「…フフッフッ………」

「だからとりあえずテメェは、」









「気を楽にしてろ」










そうして6人は殺し合う。







その中で、アイリはただうずくまりながら涙を流していた。




争ってほしくなかったから。

傷ついてほしくなかった。

血を流してほしくなかった。




何故自分のために。


下らない存在なのに、ちっぽけで矮小な存在だというのに。




百歩譲ってローは解ろうが。



どうしても解らない。



何故ペンギンとキャスケットまで?ベポもなんで!先ほど出会ったばかりのミスターは?


そして、そして?




『ドフラミンゴ、様、?』




何故彼も?

どうしてあんなに必死になって戦っているの。



いつものあの憎悪すら感じさせる笑みが彼の……ドフラミンゴの表情には微塵も無かったのだから。




「アイリ」

『っえ』




彼女を呼んだのはドフラミンゴ。彼以外の何者でもなかった。


その傍らで投げ飛ばされるローを見て小さな悲鳴をあげながらも、アイリは片時も彼から目を離すことはできなかった。




「お前はおれのモンだ。
誰にもやらねぇし、涙の一滴も無駄にすんな」

『…………!』


気付いた。
そこで気付いた。
ようやく気付いた。





彼の想いを。
気持ちを。
どれだけ不器用かを。



「アイリは渡さねぇ!!!!!」

「っざけんな!!!!!!!」



吠えたのは意外にもキャスケットだった。



彼は狙撃の手を休めずに、かつこれでもかと言わんばかりに声を張り上げていた。



「アイリはっ!

っおれの、家族なんだよ!!血なんか繋がってなくてもな!!!!

捨て子だったおれを拾ってくれた船長もペンギンもミスターもベポもアイリもみんなみんなみんな!!!!!!

おれに居場所をくれた!
世界でたったひとつの家族なんだ!!

おれが守るんだよ!!!」

「……おれの世界はローが前提だ」



キャスケットが言い終え、ドフラミンゴに殴られてから次いで唇を開いたのはペンギンだった。



彼は器用にもカトラスを操りながらドフラミンゴへ突っ込んでいく。


しかしその舌を休めることもしなかった。




「おれの命の所有者もローだ。
おれはローのためならば何でもしてきたし手段も方法もいとわない。

ローの幸せはおれの幸せだ。

だがアイリ。
ローの幸せの根源は現在お前にあるんだ。

だから、助ける」




涙が止まらなかった。







私なんかでいいの?














 

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