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めいん










頑丈な扉をも容易く壊し、ドフラミンゴのいる元へと辿り着いた。



足を踏み入れただけで、思わず辟易してしまうほどの破気と殺気を痛いほど身体に浴びながらも彼らは歩みを止めない。




ペンギン達は、てっきりローはドフラミンゴに向かって真っ先に殴りかかるのかと思っていた。


しかしそれはとんだ検討違いで。




ローはただ柔らかい笑顔を浮かべると高笑いするドフラミンゴの隣をすり抜けていく。

まるで彼など、そこらへんの壁や背景などと同化してしまったかのように。



その眼中には微塵も入っていない。




アイリ以外の者など何も。




「アイリ」

『……ロー、………?』




ローの声だけで、彼女は目を覚ます。




「本当に好きな奴を目覚めさせる時にキスなんて回りくどいものは必要ねぇんだな」
だなんて、いかにも得意気に言って退けるローにドフラミンゴは明らかに眉をひそめてみせた。



だが肝心の2人はただ互いの存在を確かめるかのように見つめあうだけ。




先に動いたのはローだった。


彼はただ、まるで壊れ物を扱うかのような優しい手つきで彼女をそっと抱き寄せる。


海牢石でできた檻であることも、彼が無力化することも問わずにアイリを抱きしめるローに一同は呆然と立ち尽くしていたが、当の本人はただ柔らかく微笑むだけなのだから言葉も紡げない。



『なん、で』

「どうした?」

『なんで、ここに、いる、の?』

「お前がここにいるからだ」




茶化す訳でも、冗談を言うわけでもなく。

ただ真面目に言ってのけるのだから彼女は数秒間ほど息をするのを忘れていたほどだった。


来てほしくなかった。
ただ、彼女はそれだけ言った。



『見るな、こんなみすぼらしい姿』




ペンギンやキャスケットらはそのあまりにも冷たい言葉と声に心臓がつかまれるような感覚すら覚えた。


それでも。
それでも彼は嘲笑う。




「うそつけ。寂しかったくせに」

『っ、!』

「痛かっただろう?
独りでよく我慢したなアイリ」

『っふ、う……!』

「待たせちまって悪かったな。
もう、大丈夫だ」

『ロー!、ロー、ロー!!!!ローローローろぉおっ!!!!!!』





子供をあやすようにその背中をポンポンとその背を数度たたいてやれば彼女は堰を切ったように泣いた。

ただひたすらに彼のパーカーを握り締めて。









愛しい人の胸で泣いた。

















 

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あきゅろす。
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