めいん
4
釈然としない。
喉の奥で様々なものが絡まって、吐きそうにすらなった。
しかし、その感情などは無理やり噛みしめてアイリの首根っこを掴んでそのまま持ち上げた。
羽のように軽い。
ぷらん とぶらさがる少女はさしずめ狩人に捕まった兎のようだ。
「ガキがそんなこと気にすんな。黙って寝ろ」
『わたしは否定しました』
「うるせぇ」
そのままベッドにポイと放りなげるが、彼女は一筋縄ではいかなかった。
投げられる直前、アイリの腕がぬらりと伸び、おれの腕を掴んだ。
何事だと理解するころには、綺麗な一本背負いが決められていた。
あまりに突然すぎて、受け身など取れずに布団に身を沈めることになった。
これにアイリも勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
その嘲る表情には、流石に黙っているわけにはいかない。
額に青筋が立っているのか、こめかみがはちきれるほど痛む。
眼球運動を限界までに駆使して、相手を眼殺しようと試みた。
そしてアイリは望む所だと言う風に、両手を広げて構えた、
「ねぇ……キャプテンの部屋、なんかうるさくない?」
そろそろ自室に戻ろうとした時にそう言い出したのはベポだった。
耳を傾けてみれば、確かにドタバタと乱闘しているような音。
キャスケットは帽子を深くかぶり直して、いつになく真剣な声で言った。
「敵がどこからか潜入した、とか?」
「有り得なくもない」
キャスケットの問いに返事をし、おれは防寒帽を目深に被った。
無言で船長室の方を指さしてみせる。
そして彼らが、おれの指の先を見た時には思わず絶句してしまっていた。
そこには信じがたい光景が広がっていた。
「窓が、あいてる」
「お、おい、そこらへんの物もちらかってるぞ!」
ちょっとした疑問がおれらの勝手に確信へと近づけてしまった。
「「「キャプテンを助けなければ!」」」
一方、船長室ではアイリとローの闘いが繰り広げられているだけだった。
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