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めいん





「あっははははは!」

「にゃー?にゃにゃー」

「……ミスター……っ!!!!」

「キャスケット!脱ぎまーす!!」

「どうせおれに女なんてぇえ!」

「熊が喋ってごめんなさぁああい!!!!」






『……………予想外』





アイリは目の前で暴れまわる船員達を横目に、ぼそり と呟いた。


泣き上戸笑い上戸、クルーの酔っ払い片は実に様々で見ていて飽きることがなかった。



しばらく黙って眠っているローの髪を何度か撫でながらその景色を見つめていた。




「あっはっは!
いいね、キャスケット。その調子その調子!」

『ちょっと止めて下さい。
わたし、そんなの見たくない』



何故か全くもって酔っている気配のないミスターは、やんややんやとキャスケットを煽る。


彼は、たらりらりらーっなんて自分でメロディを歌い脱ぎ始めるのだからアイリは眉をしかめていた。



脱ぎ上戸、なんてね。




ベポは自らが熊であることを嘆きに嘆いて、そのふわふわの毛を刈りあげていた。これはこれで面白いが。



ペンギンは至って冷静に、ミスターに向かって罵倒しているらしいがその目線の先にあるのは観葉植物だ。

完全に酔っ払っているらしい。




そんな彼らを見てゲラゲラと笑うミスターを見つつ、彼女は嘆息する。






皆に一杯目の酒を注いだ瞬間に、まず人数が半分になった。

二杯目でほぼ呂律が怪しくなり、三杯目で酔いが回った。



ペンギンは流石、酒豪と吟われるだけあって十杯ほどはいったが最後にはこの有り様だ。




『なんで貴方は酔ってないんですか』

「あらら、さっきのノリでミスターって呼んで下さいよ。プリンセス」

『ロミオさん、なんで貴方は酔ってないの』

「ああジュリエット!
それは私が泥沼と呼ばれているから!!」

『ぷっ』

「ペンギンはザルですが、ザルだって穴が詰まれば蓄積される一方ですから」

『なるほど。頑丈な肝臓なんだ』

「まぁ、解剖学的には」




ケラケラと冗談を交えながら話す彼だが、その呂律も目線もしっかりしたもので。


本当に酒に強いのだろう、もう十何杯目かわからない酒をもう一度煽っていた。


アイリはぼんやりと視線をあげて、観葉植物に掴みかかるペンギンを観察した。



何度もミスターミスターと罵倒するその姿から、本当に嫌悪していることが見て窺えた。




『なんで、ペンギンとミスターは仲が悪い?』

「仲が悪いというか……
私が一方的に嫌われている、って言った方が正しいかな」

『あのペンギンが?』




それでも、よほどのことをしていない限りあの彼が人のことを嫌うなどといったことはないだろう。



そう思って怪訝そうに眉をしかめれば、ミスターは心情を悟ったのか唇を開いた。



「ペンギンはね、私に可愛い可愛いお姫様が盗られてしまうんじゃないかって心配なんですよ」

『…………あぁ』

「私がランキング戦に負けたのもそのせいなんです」

『え?』

「ふふ、
決着がつくまえに気を使って手を抜いてきたペンギンに思わずこう言ったんです。
“てめぇが負けたらおれがキャスを掘るぞ”って。
ぶちギレられちゃいましてね」

『………キャスケットもキレなかったのそれ』

「いえ?
ただ、ペンギンがその後で
“キャスのロストバージンはおれのモンなんだよ!!!!”
って叫んでお互いに照れあってましたね。
……今思い出してもあれほど気味悪い光景はありませんでした」

『目に浮かぶ』

「本当、これだからお子様は困るんですよ」




はぁ、と大袈裟にため息を吐きながら彼は顎の無精髭を撫でる。


それを彼女がじっ と見ていれば捕縛されて頬擦りされた。




髭が痛かった。

彼女は痛さのあまりにミスターを殴り飛ばしたのは言うまでもないだろう。











 

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あきゅろす。
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