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めいん







もっともだった。


血が嫌い。
じゃあ戦わなくていい。なんて話しにはならないし、なれない。



せっかく強い戦闘員だと言うのに、戦わなくては意味がない。

切れ味のいい、高価なサーベルで豆腐を切ること並みに勿体無いことだ。



一瞬、おれの表情にも戸惑いが訪れた。


しかしアイリは何でもない事のように淡々と答えたのだから。




『戦えます。
わたしはご命令とあらば、戦います』



それはあまりに真っ直ぐで歪曲した言葉だった。



水が注がれたグラスの縁を、つつ と白魚の指先でなぞる彼女。
その姿はどこか悲しげだが、幼いながらに艶めいていた。



「じゃあさ、」



少しだけ降り立った静寂を破ったのは、ベポだった。

彼はにこにこと目映い笑顔でこう告げた。



「おれの命令も聞いてよ!」



次の言葉に、アイリの大きな瞳が更に見開かれた。



「あのさ、アイリちゃん、おれらに敬語使うのやめにしよ?」

『はい?』



彼女の澄んだ瞳が、驚きと戸惑いの色を孕む。


それが、先ほどまで無表情のロボットみたいだった彼女とは全く以て違ったから、おれはつい笑った。



アイリは、何を言っているのか理解できないように聞き返した。



『敬語、と言いますと?』

「ホラ、それだよ!
それじゃ何時まで経っても仲良くなれないよ。
だから、ね?」



ほんのりとだけ、色付いた彼女の頬を見てクルーたちは胸内でベポを褒める。


ベポは、ただ純粋な好奇心で話しかけただけなのだったがアイリがベポに対する好感度は一気にあがっただろう。



桃のように淡く色付く頬がそう言っていた。



『………………うん。よろしく』











 

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あきゅろす。
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