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めいん







「……お前、内臓は?」

『治った』




そういえば、と思い眉をひそめながらアイリに問えばなんとも信じられない返答がくる。



自然回復力ではどうにもできない領域である。


ローはため息をついて、無言のままに彼女の腹に耳を当てた。





そして目を見開いた。





『……だから、治ったってば』





彼女の内臓器官は正常に活動していた。



臓府を損傷すれば、内臓は各々の機能を自動的に停止させる。

しかし彼女の五臓六腑は確実に健康そのものの音をしていた。



よくよく見れば、先ほどの中将に折られた手の平も、打撲の痕も切傷も擦り傷もすべて。



はじめから存在していなかったかのように綺麗に消え去っていた。




ローは思わず、先ほどまでの出来事が全て夢なのかと疑った。



『わたしは、人の模造品だから。
悪魔の実の手助けもあって傷の治りは人間の何十倍も早い』



まるで自分を嗜虐するような口調に、彼女自身が憂いの表情を浮かべた。


ローはアイリを横目に嘆息してから、冗談混じりの笑みで揶揄してみせた。



「そいつは初耳だな。
それじゃSMプレイには最適な躯ってことか」

『ローが受けでいいなら試そうか』

「意味ねぇだろ」



的確な彼のツッコミに、アイリは小さく吹き出す。


彼女の顔に笑顔が戻ったのに気分を良くしたのか、ローはその小さな手を握りしめる。




それから皆の待つ船へと帰る。






全部終わったのだから。


アイリの記録も
思い出も
痕跡も
彼女自身も
スベテゼンブ。




ローの手中に握ったのだから。








 

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